2010年3月29日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第8回)

今回は、ARFのThe ARF Listening Playbookの



「第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の


第4節の紹介です。


1.会話量シェアと市場シェア(前回)


2.結果の予測 (今回)


3.会話の貨幣的価値


4.注意事項: 販売の予測におけるセンチメント(好意度)の役割と、データの品質


5.リスニングによるメディア・リサーチ、視聴者ターゲティング、プラニング、広告テスト


6.組織デザインと発展


7.リスニングの可能性


が続きます。 






**********************



5.リスニングによるメディア・リサーチや、視聴者ターゲティング、プラニング、広告テスト







これまでのマーケティングの発展に加えて、リスニングによるメディアの変革が現在起こっている。


広告主や広告会社は、視聴者の特定や、広告テスト、コミュニケーションのターゲティング、メディア

計画といった最も基本的な業務を行う新たな方法を模索している。






(1)テレビ視聴意向






テレビの視聴は、1970年代以降のビデオの普及によって、厳密なスケジュールにそった生活行

動から、より柔軟で、オンディマンド形式に移行した。


テレビは「見たい時にみる」という現実が広く浸透している。それで大学で広告やマーケティングの

授業の時に、「決まった時間にテレビを見る」といった考え方を学生に説明する場合、目新しいもの

で、例をあげて意味を説明しなければならない。


学生にとって、「となりのサインフェルド」や「フレンド」といったアメリカの人気テレビ番組が放送され

ている間、全米中の機能がストップしたことは信じられないことである。






マスメディア時代のテレビ視聴者は、現在に比べると選択肢は少なく、テレビ視聴というのは儀式

的なものであった。


エンターテイメント番組の多さや、技術によって柔軟に対応できる状況の中で、メディア会社や広告

主は、次のことを知りたいであろう。


すなわち、人々はこの番組やあの番組を見るのだろうか。またそれぞれの番組についてどのように

思うのだろうか。


これらの問題の答えをえることによって、その影響を最大化するために、番組のストーリーや登場

人物を変更したり、販促やマーケティング、メディア戦略を修正するかどうかをブランドが決定しや

すくなる。






リスニングのデータは、視聴意向の指標を開発するために使われる。


リスニングのフルサービス企業であるコレクティブ・インテレクト社は、


ゴールデンタイムのテレビ番組をランキングする方法を開発した。


インテレクト社は、リスニング・ツールを使って、それぞれの番組についての口コミの分析を行い、

視聴意向や、類似性や好意的、否定的な関係性を調べた。


収集したデータにターゲット属性やジャンル、放映日などのウエイトづけをして分析を行った。


「テレビ視聴意向」レポートという形で、シンジケート・データ・サービスとして販売した。






図60.リスニングのデータは、テレビ番組視聴意向を示すために使われるようになった。ソース:Collective Intellect






レポートの抜粋は、今週人々が見たい番組のリストを示している。平均視聴は番組シーズンが始ま

って以降の視聴意向の値である。


週ベースで出される論評とトレンド報告が、番組と視聴者との関係の強さについてのインサイトを提

供してくれる。


短期的には、この情報は広告を目標視聴率に近づけるために戦術的に使用される。


また長期的には、リスニング・データは将来の視聴率を予測するためのモデル構築に活用さ

れる。そのモデルは、新番組の成功の予想や、メディア計画、広告のバイイングなどのいろ

んな目的に利用されるものである。






2)広告テスト: 広告好意度の予測






広告テストには、広告好意度の尺度が多くの場合含まれる。というのは、好意度が、リコールや態

度変化、推奨といった広告の効果を推定する質問と関連性があるからである。(スミスら、2006)






TNSシンフォニーは、彼らのリスニング・ツールセットで測定した好意的な感情の指標であるソーシ

ャル・メディア好意度が、伝統的に測定される広告好意度と相関があることを発見した。


TNS好意度インデックスに基づき11のトップ・ブランドを取り上げ、さらに3つのブランドを付け加え

た。






表2.8.ソーシャル・メディア好意度は、伝統的な広告好意度と相関がある。ソース:TNSシンフォニー






シンフォニーの分析は相関関係を明らかにした。


シンフォニーのジム・ネイルは次のように述べている。「ソーシャル・メディア好意度は、伝統的な方

法で測定される広告好意度の代用になるものである」


(ネイル、2008)


メディア会社は、解決不能な困難な問題に直面する。


テレビは広告メディアとして最も重要なものであったkれども、個々の番組の視聴者の数はどんどん

少なくなり、さまざまなメディアに分散される状況である。


メディア会社は、長年、視聴者の質に焦点を当てることに注力してきた。


リスニング分析の到来とともに、メディア会社は、行動指標のような間接的な指標から、人々がブラ

ンドや広告について実際どのようなことを言っているとか行っているかを理解する方向に向かって

いる。


ESPNとCNNの2つの例から、以下のことを学ぶことができる。すなわち、どのようにすれば、リス

ニングによって、視聴者をより深く理解することができるか、また、広告がどのように機能するか、

どのようにすれば、広告主がメデイア投資からより価値を得ることができるかといったことである。


リスニングを通して、メディア会社は、広告主と到達してほしい視聴者とを効率よく結び付ける「会話の適合性」の点から視聴者を選別し始めた。


ここで取り上げた事例から、ターゲティングやプラニングといった業界で確立された基本的なプラク

ティスの方法が変わって行く可能性を見ることができる。






3)メディア・オーディエンスの特定






NFLとカレッジ・フットボールの中継番組での13のブランドの広告と、放送後の口コミとの関係を

SPNは、リスニングの専門家であるケリー・フェイと共同で調べた。






1週間に1度行っているケラー・フェイのTalkTrack®という全国調査を使って、ESPNの視聴者は、

そうでない視聴者よりも、広告主に関連した口コミを行っていたことを発見した。


口コミは、放送日の当日にピークに達し、その後も番組を見なかった人々よりも高い頻度で広告主

に関連した口コミを行っていた。


2つのブランドを取り上げ、全国的な会話の規模を推定して、広告を見たことから自然となされた口

コミにより8000万から9000万に及ぶ会話の増大が起こったとケラー・フェイは推定している。


さらに、テレビとESPN.COMの両方でフットボールのゲームを見た人、つまり関与度が高いと思

われる人は、どちらかでしかゲームを見なかった人よりもずっと口コミの量が多かったことも分かっ

た。






図61.ESPNでの広告が口コミを誘発。小売企業のTV広告を見ていたファンの人々が、8000万以上のブランドについての口コミを生んだ。ソース:ESPN






ESPNのリサーチと分析部門のSVPであるアーティ・バルグリンによれば、これらの結果は、

広告のクロス・プラットフォーム戦略を正当化や、視聴後の広告の影響の推定、メディア計画や

広告スケジューリングの相互作用や効果を理解に役立つものである。


以上のようなリスニングによるインサイトによって、広告主とESPNとの間の議論が変わってきてい

るとバルグリンは語っている。(ケラーとバルグリン、2009)






4)ブランドについての会話に基づくターゲット・オーディエンス






視聴者は、番組や登場人物、広告自体よりも、ブランドやその他のことについてより多く会話してる。


CNNもケリー・フェイと共同で、 視聴者はケーブル・テレビよりも車、例えばレキサスについて日々

多くの会話をしていることを突き止めた。


ESPNの発見と同様、会話をよくする人は、テレビやWEBもよく使っていた。


事実、CNNの視聴者には、レキサスについて集中的に会話する人々が存在した。


全人口に比べて、彼らは4倍もブランドについて言及していた。






図62.テレビとWEBの両方を使っているCNNの視聴者は、全人口と比べて4倍も多くレキサスに

ついて語っていた。ソース:CNN






CNNの広告販売リサーチのSVPであるグレッグ・リーブマンは次のように語っている。これらのデ

ータは、我々の視聴者が、他のネットワークの視聴者と比べて、どの商品やサービスについて多く

語っているかを知ったり、広告主や新規の顧客にCNNの価値を示すのに役立つものである。


(ケラーとリーブマン2009、シタインバーグ2009よりの引用)






5)メディア・プラニング






会話の話題と会話の場所の相互作用が起こっている。これが新たな科学ではないとしたら、メディ

ア・プランニングにとっては新たな芸術と言える。






分析のために会話は、リスニング・リサーチによって、トピックスとサブ・トピックスに分類されるとい

うことを本書で述べてきた。


リスニングのフルサービス企業であるコンバージョン社は、クライアントのためにブロードバンドの話

題について調べた。


エスキモー・アレウト語が、雪を表すのに7つの言葉を持っていたり、画家が色を区別するさまざま

な用語を持っているように、言葉というものは、ある特定の文脈で使用されるものである。


ブロードバンドを語る時も同じである。


コンバージョン社は、人々が次の4つの文脈で、ブロードバンドを語っていることに気付いた。

つまり、クライアントのブランドを語る場合や、モバイル・ブロードバンド、固定ブロードバンド、ブロー

ドバンドによる高精細テレビ放送である。(ボウズ1911、キー2009)






さまざまな会話がどこで起こり、その場所の品質を評価することによって、ソーシャル・メディアのプ

ラニングが可能になる。


この事例の場合、コンバージョン社は、ソーシャル・メディアを特定し、それらを品質と会話の適切

性によって、分類、評価づけを行った。


この事例では、ブランドやモバイル、固定ブロードバンドについて技術的な議論を行うには、フォー

ラムが最も適していることが分かった。


高品位テレビ(HDTV)の場合は、熱狂者が多く集まるブログが適している。


コンバージョン社のCEOであるキーによれば、場所やサービスの提供は、地理的にさまざまなの

で、会話のベストな場所は、プロバイダーやロケーションによって特定されるものである。






表3.話題の会話が起こる場所を理解したり、その場所のランキングづけを行うことは、ソーシャ

ル・メディア・プラニングに役立つ。 ソース:Converseon



★姉妹ブログ みんなのMR.COMもよろしくお願い致します。



《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》

0 件のコメント:

コメントを投稿