●今回は、ARFから入手した資料The ARF Listening Playbookの
「第1章 リスニングの本質」の後半部分の紹介です。
7.どこでブランドのリスニングを行うか
ブランドにとって、オンラインとオフラインの両方の口コミを聞く必要がある。オンラインの口コミの方がより多くの関心を集めやすい。というのは、その種類の多さや、ボットやエージェント、スパイダーといったツールによって、より広がりやすいからである。
オンラインの情報源は、ブランド発信と消費者発信に分類することができる。
ブランド発信には、顧客や個人のコミュニティや、ブログ、ディスカッション・フォーラム、Eメール、顧客サービス・ログ、ツイッターの企業アカウント、フェースブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サイトへの公式アップなどが含まれる。
消費者発信には、ブログやフォーラム、レイティング、レビューサイト、ツイッター、ソーシャル・ネットワーク、YouTubeやFlickrなどのメディア共有サイトなどが含まれる。
通常のリスニングは、一般に入手可能な公開情報に限定される。
オンライン上の議論の量から見て、ブランドについての対話はおよそ10%前後と考えられる。ブランドについての会話の10個のうちの9つは、人々が会ったり話しを行ういたるところで起こるものである。
例えば、職場やスポーツ・イベント、友人との会話である。コメント・カードやトレードショー・ノート、CRMや営業管理システムへの記録などを通して、ブランドについてのオフラインの口コミを収集することができる。もし収集がいい加減に行われたならば、コメントの価値は疑わしいと言える。そのため、オフラインの口コミを体系的に収集するために、オンラインの口コミを行っている専門会社に依頼することになる。
8.ブランドについて誰にリスニングを行うか
ブランド発信と消費者発信を通して、さまざまな声をブランドは聞くことができる。もちろん、どのような声を聞くかは、ブランドの目標や、リスニング・プロジェクトの目的によってさまざまである。
ブランド発信は、ブランドに参加している人や参加しようとしている人の声を聞くことに焦点を当てている。例えば、1)顧客や、2)見込み客、3)ビジネス・パートナーなどである。
消費者発信は、それよりも範囲が広い。例えば、1)顧客や、2)見込み客、3)ビジネス・パートナー以外に、4)友人や知人、フォロアー、5)その他大勢が含まれる。
消費者の声はいくつかのセグメントに分類することができる。それで関連する声だけをブランドは聞けばよい。検索のためのソフトウエアを選んだり、最も適当なコメントを選んだりすることによって、これは可能である。その中から、計画やタイミング、費用、人手に最もあったものを選べばよい。
例えば、1)カテゴリーや、2)ブランド・ユーザーや、ロイヤル・ユーザー、過去ユーザー、スイッチャー、3)ブランドのノンユーザー、4)ブランドの購入意向者、5)ブランドの伝道者と中傷者、6)競合品のユーザー、7)性・年代、子供のいる主婦、居住地域、8)時間帯、9)満足している顧客と不満足な顧客といったセグメントである。
9.オンライン上の意見の代表性とデータ品質の問題
ソーシャル・メディアへの依存度が高いので、消費者発信の意見の代表性の問題が生じる。
ブランド発信の方は、多くの場合、消費者に登録を依頼するので、それほど問題にはならない。他方、不特定多数の多くの人を対象にした「消費者発信」の対象者の場合、正しい人に聞いているという確信をどのようにして得ることができるだろうか。
以下のようなデータ分析を行うことによって、消費者の声の代表性の問題を解決を試みている。
1)ブランドのオンライン上の足跡をたどり、リスニングの目的に合致するかどうか、その情報源の精査を行う、
2)すべてのサイトを対象としないで、ブランドにあったサイトを選択する、
3)顧客やカテゴリー、ブランド関連の用語を収集するための検索を行う、
4)消費者の年令や性別、地域、その他の特徴を特定するテキスト分析を行う、
5)意見を掲載した個人の公開しているプロフィール情報を入手する。
データの質は、結果に影響を与える。リスニング・ソリューション会社は、経験やコンサルティング、ソフトを提供することによって、不要な情報をクリーニングしたり、取り除こうとしている。
リスニング手法が拡大するために、業界は、リスニング・データを改善するためのデータ品質基準を設定する必要がある。ブランドのリスニングにおいて、情報源の代表性とデータの品質について、常に注意を払う必要がある。そうすることによって、データとそれに基づく決定の信頼性を高めることが可能になる。
10.ブランド・リスニングのアプローチ方法
ブランド・リスニングの方法は、いまだ体系化されていない。検索リストから、CRMやセールスのシステムと完全に統合されたリスニング・プラトフォームまで、さまざまである。この業界は、現在ある種、ゴールド・ラッシュ時代の様相を呈している。つまり、駅馬車が毎日、新たなエネルギーと変革、新技法を持って、西部に向かっているといった状況にある。
異なった価格のさまざまなサービスが提供されている市場をどのように把握すればよいか。いくつかのアプローチを考えたけれども、プロジェクトの目的によるソリューションの分類はうまく行かなかった。ソリューションは、必ずしもプロジェクト別ではない。考慮の結果、我々は、ツールやサービス、機能によって、次の6つの分類を行った:
1)検索とモニタリング
検索エンジンは、オンライン上の情報源のリストアップを行う。そして、検索ワードの追跡を行い、人気のあるワードとトレンドを報告するものである。簡単なリストからミニ・マイニング・ツールなど、分析力はサービスによってさまざまである。あるサービスは、新たな結果を得た場合、知らせるサービスを提供している。
2)リアルタイム・サーチ
新しい検索エンジンは、ソーシャル・メディアに特化したもので、「ソーシャル」についてのインサイトを提供する。発言がどのように共有されるかについて詳しく説明を行い、人々に情報に基づいて行動するためのツールを提供する。その多くは、警告の機能を持っている。リアルタイム・サーチは非常に関心の高い分野である。
3)メディア・モニタリング
あるサービスは、ソーシャル・メディア以外にも通常のメディアもモニターしており、ユーザーに報告するために警告やダッシュボード機能を持っている。
4)テキスト分析
テキスト分析のソフト会社は、次のようなツールや機能を持つソフトを提供している。
①対話の収集: 処理、分析、報告、
②作業の流れや協力、
③CRMソリューションや外部や内部システムとのデータ統合
④ウエブのセルフサービス・ツールから、企業向けのソリューションまでの提供、
ある企業は、ソフトをクライアント企業にインストールを行う。またある企業はウエブを通してサービスを提供している。これらの両方のサービスを行う企業もある。テキスト分析は非常に注目を集めている分野で、特にウエブ・ベースのソリューションは人気が高い。
5)フル・サービスのリスニング・プラトフォームの提供
リスニングのプラットフォームを提供する会社は、テクノロジーやサービス、コンサルティング、つまり、オフラインとオンラインの口コミ情報を分析するソリューションを提供している。中には、リスニング業務を超えて、プラニングから実施、マーケティング活動の評価、メディア、広告、PRのプログラムなどのエージェンシー的サービスを行っている会社もある。
6)ブランド・コミュニティ
ブランド・コミュニティとは、ブランドとの相互作用とソーシャル・メディアを組み合わせた、招待制による参加で作られるウエブ・コミュニティである。コミュニティ・メンバーとブランドの担当者間の対話を生み出すためのプログラムや活動を運営する。アンケート調査を使ってフィードバックの収集を行う。リスニング・ソリューションの範囲は、グーグルや、マイクロソフトの次世代検索サービス「ビング」と連携した検索エンジンから、通常のウエブ、あるいは洗練された個人コミュニティに至り、さまざまである。また処理や分析能力、サービス、システム面でさまざまである。リスニングの目的や予算、人員によって、リスニングのソリューションの選択は、おのずと異なったものになる。
11.リスニングによって、ブランドについて何を測定するか
何を測定すべきか。無数になるソーシャル・メディアの指標の中から選ぶことは挑戦的で、論争的でもある。我々は、多くの指標を検討した結果、次の4つの分類を行った。
1)トラフィックやクリックとウエブ・ログの行動指標
2)ページ・ビューやビデオ・ビューといったメディア露出指標
3)利用時間や転送、インストールやコメント、といった参加指標、
4)ウエブサイト・コンバーションや、ECサイトでの注文といった行動を示す取引指標
これらの指標は、ソーシャル・メディア・プログラムや広告キャンペーンの効果を記述したり分析するのに適しているけれでも、対話のリスニングにはしっくりこない。このことを踏まえて、我々は、リスニング指標についての対話に焦点を当てた指標や、アプローチを探ることにした。
以下は議論のきっかけとなるポイントである。
1)総じて、トレンドは、時間の経過による対話の変化についてのインサイトを提供する、
2)対話のレベルや対話のシェア、
3)トピックスやサブ・トピックス、テーマといった対話の詳細、
4)対話に関連した人々や、ブランド、その他の要素、
5)全体や詳細な感情、
6)対話における権威者やパターン、インフルエンサーへの到達、
これらの指標は、統計的、あるいは定性的である。
対話を構造化や測定、レポートするテキスト分析手法を用いたプロジェクトでは、定量的レポートや、図表、ビジュアルが使われる。例えば、個人的なコミュニティを使ったプロジェクトは、より定性的アプローチを使うかもしれない。それは、重要なトピックスやテーマを抽出したり、感情を特定したり、トレンドを設定するのに、分析者の経験に頼るものである。特にコミュニティは、調査によって、対話分析を補足してくれる。
我々が尋ねた専門家達は、 マーケティングや広告プログラムの効果を推測するためにリスニングを使用する場合は、 変化がお互いに関連するように、プリー・ポスト・テスト方法を使うことを勧めた。
さらに、リスニングから得たデータと、消費者やブランド・データー例えば、セールスやマーケット・シェア、取引量、平均取引サイズなどーとの関連性が分かれば、影響や、先行あるいはタイムラグの関係性が明らかにすることができるかもしれない。それは、ブランド戦略や戦術立案の大きな手助けとなるものである。
12.リスニング・マーケティングに向けて
生の会話を量的数字に変換するリスニング力は、予測モデルやビジネスの実践における新たな役割を形成するのに役立つものである。リスニングによって測定された数字は、市場への投資決定や、市場シェアの傾向やセールスの予測、販促プログラムの決定、オーディエンスやメディア計画の定量化のために、開発、検証、使用される。このような刺激的な展開は、「リスニング・マーケティング」というものを生み出しつつある。その可能性が探究され始めたばかりである。
13.リスニングの挑戦と機会
我々のインタビューの中には、リスニングの専門家達の次のようなチャレンジが含まれている。その内容を見てみよう:
1)「多くの企業は、リスニングに対して前向きではない」、
2)「ソーシャル・メデイアは、伝統的なマーケターに対して挑戦的である、
それゆえ、経営層に新しい世代の人材が必要である、
3)データの蓄積量は膨大である、
4)ソリューション会社のサービスは、より分析的かつ詳細であるべきである。それがこの業界の発展に貢献する、
5)統合的、インサイト、行動志向、
6)リスニングから得たインサイトを人々に伝えることは困難である、
7)インサイトをどのようにしてお金にするか、
8)「リスニングの方法についてわからない」、
我々はまた、リスニング方法が利用される最適な場合とそうでない場合について尋ねた。
彼らの答えは、
1)「重要でない場合など考えられない」、
2)「会社が顧客満足ではなく、価格だけに関心がある場合」、
3)「プライバシーに関心がある場合」、
「人間を真ん中」に置き続ける目的で、リスニングを中心に組織を作ろうとするブランドや企業の意思によって、リスニングの可能性は大きくなる。
膨大なデータを測定したり、そこから差別化を図るインサイトの抽出を行ったり、ブランドやコミュニティとの相互利害の関係をもって行動するように、消費者を動機づけるような説得力のあるストーリーを作るといった、新しいスキルが求められている。
ブランドにとって、リスナーとして、常に謙虚で学ぶことが重要である。
注)以上は試訳であり、最終訳ではありませんので、他への引用等は避けて下さい。
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