2010年2月22日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (The ARF Listening Playbookの紹介第3回)

●今回は、ARFから入手した資料The ARF Listening Playbookの

「第1章 リスニングの本質」の後半部分の紹介です。


7.どこでブランドのリスニングを行うか


ブランドにとって、オンラインとオフラインの両方の口コミを聞く必要がある。オンラインの口コミの方がより多くの関心を集めやすい。というのは、その種類の多さや、ボットやエージェント、スパイダーといったツールによって、より広がりやすいからである。

オンラインの情報源は、ブランド発信消費者発信に分類することができる。

ブランド発信には、顧客や個人のコミュニティや、ブログ、ディスカッション・フォーラム、Eメール、顧客サービス・ログ、ツイッターの企業アカウント、フェースブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サイトへの公式アップなどが含まれる。

消費者発信には、ブログやフォーラム、レイティング、レビューサイト、ツイッター、ソーシャル・ネットワーク、YouTubeやFlickrなどのメディア共有サイトなどが含まれる。

通常のリスニングは、一般に入手可能な公開情報に限定される。

オンライン上の議論の量から見て、ブランドについての対話はおよそ10%前後と考えられる。ブランドについての会話の10個のうちの9つは、人々が会ったり話しを行ういたるところで起こるものである。

例えば、職場やスポーツ・イベント、友人との会話である。コメント・カードやトレードショー・ノート、CRMや営業管理システムへの記録などを通して、ブランドについてのオフラインの口コミを収集することができる。もし収集がいい加減に行われたならば、コメントの価値は疑わしいと言える。そのため、オフラインの口コミを体系的に収集するために、オンラインの口コミを行っている専門会社に依頼することになる。

8.ブランドについて誰にリスニングを行うか

ブランド発信と消費者発信を通して、さまざまな声をブランドは聞くことができる。もちろん、どのような声を聞くかは、ブランドの目標や、リスニング・プロジェクトの目的によってさまざまである。

ブランド発信は、ブランドに参加している人や参加しようとしている人の声を聞くことに焦点を当てている。例えば、1)顧客や、2)見込み客、3)ビジネス・パートナーなどである。

消費者発信は、それよりも範囲が広い。例えば、1)顧客や、2)見込み客、3)ビジネス・パートナー以外に、4)友人や知人、フォロアー、5)その他大勢が含まれる。

消費者の声はいくつかのセグメントに分類することができる。それで関連する声だけをブランドは聞けばよい。検索のためのソフトウエアを選んだり、最も適当なコメントを選んだりすることによって、これは可能である。その中から、計画やタイミング、費用、人手に最もあったものを選べばよい。

例えば、1)カテゴリーや、2)ブランド・ユーザーや、ロイヤル・ユーザー、過去ユーザー、スイッチャー、3)ブランドのノンユーザー、4)ブランドの購入意向者、5)ブランドの伝道者と中傷者、6)競合品のユーザー、7)性・年代、子供のいる主婦、居住地域、8)時間帯、9)満足している顧客と不満足な顧客といったセグメントである。

9.オンライン上の意見の代表性とデータ品質の問題

ソーシャル・メディアへの依存度が高いので、消費者発信の意見の代表性の問題が生じる。

ブランド発信の方は、多くの場合、消費者に登録を依頼するので、それほど問題にはならない。他方、不特定多数の多くの人を対象にした「消費者発信」の対象者の場合、正しい人に聞いているという確信をどのようにして得ることができるだろうか。

以下のようなデータ分析を行うことによって、消費者の声の代表性の問題を解決を試みている。

1)ブランドのオンライン上の足跡をたどり、リスニングの目的に合致するかどうか、その情報源の精査を行う、

2)すべてのサイトを対象としないで、ブランドにあったサイトを選択する、

3)顧客やカテゴリー、ブランド関連の用語を収集するための検索を行う、

4)消費者の年令や性別、地域、その他の特徴を特定するテキスト分析を行う、

5)意見を掲載した個人の公開しているプロフィール情報を入手する。

データの質は、結果に影響を与える。リスニング・ソリューション会社は、経験やコンサルティング、ソフトを提供することによって、不要な情報をクリーニングしたり、取り除こうとしている。

リスニング手法が拡大するために、業界は、リスニング・データを改善するためのデータ品質基準を設定する必要がある。ブランドのリスニングにおいて、情報源の代表性とデータの品質について、常に注意を払う必要がある。そうすることによって、データとそれに基づく決定の信頼性を高めることが可能になる。

10.ブランド・リスニングのアプローチ方法

ブランド・リスニングの方法は、いまだ体系化されていない。検索リストから、CRMやセールスのシステムと完全に統合されたリスニング・プラトフォームまで、さまざまである。この業界は、現在ある種、ゴールド・ラッシュ時代の様相を呈している。つまり、駅馬車が毎日、新たなエネルギーと変革、新技法を持って、西部に向かっているといった状況にある。

異なった価格のさまざまなサービスが提供されている市場をどのように把握すればよいか。いくつかのアプローチを考えたけれども、プロジェクトの目的によるソリューションの分類はうまく行かなかった。ソリューションは、必ずしもプロジェクト別ではない。考慮の結果、我々は、ツールやサービス、機能によって、次の6つの分類を行った:

1)検索とモニタリング

検索エンジンは、オンライン上の情報源のリストアップを行う。そして、検索ワードの追跡を行い、人気のあるワードとトレンドを報告するものである。簡単なリストからミニ・マイニング・ツールなど、分析力はサービスによってさまざまである。あるサービスは、新たな結果を得た場合、知らせるサービスを提供している。

2)リアルタイム・サーチ

新しい検索エンジンは、ソーシャル・メディアに特化したもので、「ソーシャル」についてのインサイトを提供する。発言がどのように共有されるかについて詳しく説明を行い、人々に情報に基づいて行動するためのツールを提供する。その多くは、警告の機能を持っている。リアルタイム・サーチは非常に関心の高い分野である。

3)メディア・モニタリング

あるサービスは、ソーシャル・メディア以外にも通常のメディアもモニターしており、ユーザーに報告するために警告やダッシュボード機能を持っている。

4)テキスト分析

テキスト分析のソフト会社は、次のようなツールや機能を持つソフトを提供している。

①対話の収集: 処理、分析、報告、

②作業の流れや協力、

③CRMソリューションや外部や内部システムとのデータ統合

④ウエブのセルフサービス・ツールから、企業向けのソリューションまでの提供、

ある企業は、ソフトをクライアント企業にインストールを行う。またある企業はウエブを通してサービスを提供している。これらの両方のサービスを行う企業もある。テキスト分析は非常に注目を集めている分野で、特にウエブ・ベースのソリューションは人気が高い。

5)フル・サービスのリスニング・プラトフォームの提供

リスニングのプラットフォームを提供する会社は、テクノロジーやサービス、コンサルティング、つまり、オフラインとオンラインの口コミ情報を分析するソリューションを提供している。中には、リスニング業務を超えて、プラニングから実施、マーケティング活動の評価、メディア、広告、PRのプログラムなどのエージェンシー的サービスを行っている会社もある。

6)ブランド・コミュニティ

ブランド・コミュニティとは、ブランドとの相互作用とソーシャル・メディアを組み合わせた、招待制による参加で作られるウエブ・コミュニティである。コミュニティ・メンバーとブランドの担当者間の対話を生み出すためのプログラムや活動を運営する。アンケート調査を使ってフィードバックの収集を行う。リスニング・ソリューションの範囲は、グーグルや、マイクロソフトの次世代検索サービス「ビング」と連携した検索エンジンから、通常のウエブ、あるいは洗練された個人コミュニティに至り、さまざまである。また処理や分析能力、サービス、システム面でさまざまである。リスニングの目的や予算、人員によって、リスニングのソリューションの選択は、おのずと異なったものになる。

11.リスニングによって、ブランドについて何を測定するか

何を測定すべきか。無数になるソーシャル・メディアの指標の中から選ぶことは挑戦的で、論争的でもある。我々は、多くの指標を検討した結果、次の4つの分類を行った。

1)トラフィックやクリックとウエブ・ログの行動指標

2)ページ・ビューやビデオ・ビューといったメディア露出指標

3)利用時間や転送、インストールやコメント、といった参加指標、

4)ウエブサイト・コンバーションや、ECサイトでの注文といった行動を示す取引指標

これらの指標は、ソーシャル・メディア・プログラムや広告キャンペーンの効果を記述したり分析するのに適しているけれでも、対話のリスニングにはしっくりこない。このことを踏まえて、我々は、リスニング指標についての対話に焦点を当てた指標や、アプローチを探ることにした。

以下は議論のきっかけとなるポイントである。

1)総じて、トレンドは、時間の経過による対話の変化についてのインサイトを提供する、

2)対話のレベルや対話のシェア、

3)トピックスやサブ・トピックス、テーマといった対話の詳細、

4)対話に関連した人々や、ブランド、その他の要素、

5)全体や詳細な感情、

6)対話における権威者やパターン、インフルエンサーへの到達、

これらの指標は、統計的、あるいは定性的である。

対話を構造化や測定、レポートするテキスト分析手法を用いたプロジェクトでは、定量的レポートや、図表、ビジュアルが使われる。例えば、個人的なコミュニティを使ったプロジェクトは、より定性的アプローチを使うかもしれない。それは、重要なトピックスやテーマを抽出したり、感情を特定したり、トレンドを設定するのに、分析者の経験に頼るものである。特にコミュニティは、調査によって、対話分析を補足してくれる。

我々が尋ねた専門家達は、 マーケティングや広告プログラムの効果を推測するためにリスニングを使用する場合は、 変化がお互いに関連するように、プリー・ポスト・テスト方法を使うことを勧めた。

さらに、リスニングから得たデータと、消費者やブランド・データー例えば、セールスやマーケット・シェア、取引量、平均取引サイズなどーとの関連性が分かれば、影響や、先行あるいはタイムラグの関係性が明らかにすることができるかもしれない。それは、ブランド戦略や戦術立案の大きな手助けとなるものである。

12.リスニング・マーケティングに向けて 

生の会話を量的数字に変換するリスニング力は、予測モデルやビジネスの実践における新たな役割を形成するのに役立つものである。リスニングによって測定された数字は、市場への投資決定や、市場シェアの傾向やセールスの予測、販促プログラムの決定、オーディエンスやメディア計画の定量化のために、開発、検証、使用される。このような刺激的な展開は、「リスニング・マーケティング」というものを生み出しつつある。その可能性が探究され始めたばかりである。

13.リスニングの挑戦と機会

我々のインタビューの中には、リスニングの専門家達の次のようなチャレンジが含まれている。その内容を見てみよう:

1)「多くの企業は、リスニングに対して前向きではない」、

2)「ソーシャル・メデイアは、伝統的なマーケターに対して挑戦的である、

それゆえ、経営層に新しい世代の人材が必要である、

3)データの蓄積量は膨大である、

4)ソリューション会社のサービスは、より分析的かつ詳細であるべきである。それがこの業界の発展に貢献する、

5)統合的、インサイト、行動志向、

6)リスニングから得たインサイトを人々に伝えることは困難である、

7)インサイトをどのようにしてお金にするか、

8)「リスニングの方法についてわからない」、

我々はまた、リスニング方法が利用される最適な場合とそうでない場合について尋ねた。
彼らの答えは、

1)「重要でない場合など考えられない」、

2)「会社が顧客満足ではなく、価格だけに関心がある場合」、

3)「プライバシーに関心がある場合」、

「人間を真ん中」に置き続ける目的で、リスニングを中心に組織を作ろうとするブランドや企業の意思によって、リスニングの可能性は大きくなる。

膨大なデータを測定したり、そこから差別化を図るインサイトの抽出を行ったり、ブランドやコミュニティとの相互利害の関係をもって行動するように、消費者を動機づけるような説得力のあるストーリーを作るといった、新しいスキルが求められている。

ブランドにとって、リスナーとして、常に謙虚で学ぶことが重要である。


注)以上は試訳であり、最終訳ではありませんので、他への引用等は避けて下さい。

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2010年2月15日月曜日

リスニング調査:Social Media時代の新しい消費者調査の方法 (The ARF Listening Playbookの紹介第2回)

●今回は、ARFから入手した資料The ARF Listening Playbookの

「第1章 リスニングの本質」の約半分部分の紹介です。

*Listeningは「傾聴」と訳しているマーケターの方もおられますが、
ここでは「リスニング」としました。以下はその翻訳です。


本書は、リスニング調査方法の基礎について述べている。

30以上の事例や、問題解決の方法、リスニング・マーケティングの理論的背景、
70を超えるリスニング・サービスの提供会社の紹介を行っている。

リスニング調査手法についてのすべてを知りたいと思う方にとって、
本書はまさにリスニングの本質といえる。


1.リスニング手法の定義


これまでほとんど毎日、全米広告調査財団(ARF)では、
リスニング調査について、議論してきた。
新しい用語が出てきた場合、いつもそうであるように、
人によってその定義はまちまちである。

用語の定義は、広告主やメディア、調査、広告会社の人々に
影響を与えるものなので、われわれは業界団体として、
厳密で包括的な定義を目指した。

それゆえに、リスニング手法の「操作的な定義」から始めることにした。

我々のリスニングの定義は、

「自然に起こる対話や行動、兆候を研究すること」である。

それは意図的である場合とそうでない場合がある。

それによって、人々の生活の声がブランドに届けられるのである。

まずこのリスニングの定義を説明し、その理由を解説しよう。

「自然に起こる対話や行動、兆候を研究すること」とは、
人々の本物で生の考えや、感覚、感情の研究すること。

「自然に生じた対話」とは、オープンで強制的でない形で、
ブランドや企業との相互作用によって人々の間に起こった対話を意味する。

ここでいう行動とは、ショッピングやブランドの使用などの人々が行っていることを
観察することである。
そして、兆候とは、ジェスチャーなどで人々が暗黙のうちに発するものを指す。

「意図的とは」、人によって、ブランドや企業についての話題が特定される場合を指す。

「意図的でない」とは、対話の流れが自然に流れて行く場合を表す。

「人々の生活の声が届けられる」とは、深いインサイトや説得力のある話を通してである。

「ブランドに」とは、お互いのために関係が深まり、行動がとられるということである。

この定義は、いくつかの重要なアイディアを伝達してくれる。

第1は、リスニングは、人々が語ることや、いかに行動し、どのように反応するかに
関心があり、オンライン上の対話にだけ焦点を当てているものではない。

第2に、ブランドをリスニングすることは、人々に対して責任を負っている。
つまり、リスニングすることは、非常に敏感で、尊重されるものであり、
ブランドの代弁者でなければいけない。

最後に、ブランドと顧客は、いつも学習関係にあるということである。
つまり、お互いがリスニングを行い、反応することによって改善がなされる。

リスニングのこのような定義は、オンライン上に限定されるものではない。
あらゆるところで起こることに気づくだろう。

リサーチの方法や、ツール、技法だけではない。
リスニングを行う場所や方法は、プロジェクトやブランド、顧客、
参加する人々の知識によって決められる。


2.本書の焦点


本書は、対話のリスニングに焦点を当てている。
行動や兆候についてのリスニングのガイドブックである。

以下の事例やリサーチ方法、リスニング・マーケティングの発展は、
すべて対話を軸に展開している。


3.ブランドにとってリスニングが必要な理由


インターネットへの高速アクセスや、ブログ、フォーラム、ソーシャル・ネットワーク、
ツイッター、コミュニティ、ウイキィなどの「対話型ウエッブ」によって、
自分の問題や経験、好き嫌い、人生全般、、、そしてブランドへの欲求について、
これまでになく人々はお互いに会話を行っている。

製品やサービスについての自然で豊富な生の口コミを理解することによって、
既存顧客や潜在顧客についてより学ぶために、ブランドにとってリスニングが必要である。

本書では、リスニング・サービスの実務家や研究者へのインタビューを行った。
彼らは、次のような目的でブランドのリスニングを行っていると語っている。


1)顧客の脈拍を測るー消費者の感情を知る、

2)消費者が語ることから深いインサイトを発見し、彼らのウオンツや
未充足ニーズ、要望を学ぶ、

3)顧客の声を伝統的な調査と統合させる、

4)消費者との関係性を再定義し、彼らの声をブランドに伝達する、

5)ライフスタイルや製品カテゴリー、課題についての消費者の視点の変化を理解する、

6)意見の文脈を探り、その理由を理解する。


ここで重要なことは、これらのブランドの専門家が、
リスニングから得たインサイトに基づき、
自らのブランド構築活動について発言している点である。

彼らは、例えば、
1)サービスや特徴を付加することや、
2)新しい内容を創作する、
3)製品を改良する、
4)マーケティングや広告の影響を評価する、
5)ブランド・ヘルスをより有効にモニターするなどに言及している。

彼らにとって、リスニング手法は、ブランドの成功にとって、
「あれば良い」ものではなく、「なくてはならない」ツールである。


4.リスニング手法の内容


リスニング手法は次のようなプロセスで行われる。


1)ブランド目標に関連したゴールを設定する、

2)リスニングに最も適した消費者の声や対話を特定する、

3)対話を収集し、処理する方法を確立する、

4)リスニング作業に参加する、

5)対話をトピックスやサブ・トピックス、テーマ、あるいは人によって分類
することによって分析する、

6)これらの作業を再検討し、再び実行する。


内容を共有するとともに、作業内容や参加の仕方はさまざまである。

このような対話のモニタリングや、重大なことが発生したときの通知には、
ソフトを使った場合や、フルサービスの会社とのプロジェクトの場合、
コミュニティの運営の場合などによって、異なったニーズが存在する。

例えば、詳細の実施の詳細や、方法のテストや見直し、データ・クリニーング、
レポーティングといった重要な項目は、それぞれのプロジェクトの目的
に応じてさまざまである。



5.ブランド成長のためのマーケティング課題解決に役立つリスニング


次の2章で紹介する30を超える事例は、
リスニング・リサーチとそれによって明らかにされたインサイトの活用によって
達成された広範囲なビジネス目的を反映している。

リスニング手法は、ブランドがその戦略を考える場合に最初に行うことである。

我々が取り上げた事例は、新規顧客の発見から、
ロイヤルティや顧客価値の向上にいたるブランド・マネジメントの
全領域をカバーしている。

リスニング・リサーチは、限られて機能ではなく、
ブランド成長のためのプラットフォームであると位置づけられる。


それぞれのマーケティング課題ごとに、2つ以上の事例を含んでいる。

取り上げたマーケティング目標は、


1)新規顧客の発見や、

2)新製品の開発とイノベーション、

3)ブランド・メッセージの創作と精緻化、

4)既存製品の改良、

5)販売力の維持、

6)ブランド成長の推進、

7)ブランド再構築とリポジショニング、

8)顧客サービス課題、

9)評判のマネジメント、

10)ブランド・ヘルス・マネジメント、

11)顧客対応、

12)ロイヤルティと顧客価値の向上である。



6.リスニング・リサーチの利用



本書で取り上げた事例では、ブランドが目的を達成するための戦略や、
戦術、プログラムを導くリスニング調査についての議論がされている。

代表的事例を紹介するとともに、リスニング調査の方法についても説明を行っている。

1)新規顧客のプロフィールや評価(ヘネシー・コニャック)、

2)対話の分析による市場や顧客の変化の予兆の早期察知(電子ゲーム市場)、

3)顧客のセグメンテーション(女性向け食品)

4)製品のポジショニングについて、従来の「質問」調査を補完して、有効なインサイトを付加(ジレット・フージョン)

5)コンセプト・テスト(J&Dベーコン用食用塩)

6)製品開発(フィアト・ミオ)

7)ブランドの新しい特徴の発見と評価(婦人用家庭雑誌)

8)ブランド・メッセージの開発やテスト:市場での戦術的な変化(携帯電話)、危機の対応(ハスブロ)

9)顧客参加の戦略の構築(ミニ)

10)競合の戦略や市場での行動の評価(生活用品)

11)顧客ケアの問題や機会の発見(ネットビズ)

12)ブランド拡大や、活発なコミュニティの構築、ロイヤルティの向上(ライオン・ブランド・ヤーン)


ここで、理解すべき重要な点は、伝統的な調査手法を使う場合と
同様な目的で、ブランドのためにリスニング調査が使われているということである。

我々がインタビューを行った専門家たちは、次のような既存の調査方法に対するリスニング調査の優位点を強調している。


1)スピード、即時性―結果は数カ月ではなく、数日か数週で得られる、

2)調査が有効でなかったり、新しい方法を探究する場合には素早く変更が
可能といった柔軟性と軌道修正が可能である、

3)リサーチャーの用語ではない消費者の言葉が使用される、

4)生の対話を聞いて分析が可能である、

5)リサーチャーが思いつかないような質問への回答が得られる、

6)大きなサンプル・サイズに対応できる、

7)費用的にも有利である。

以上◆

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2010年2月8日月曜日

The ARF Listening Playbookの紹介 (1)

●先週の(株)エクスピリッジのもう1つのブログ「みんなのMR」で、
IT関連の調査で有名なUSのForrester Research社のReineke Reitsma
リサーチ・ディレクターが、2010年のリサーチ・トレンドとして、
「listeningリスニング」という言葉をあげていることを紹介しました。

●彼女によれば、「消費者のニーズを理解するために多くの調査は、
これまで主に尋ねること(asking)を行っている。しかし、数字の背後にある
ストーリーを発見するために、2010年には、
リサーチは定性的なlisteningのツールを装備すべきである」と考えています。

●同時に、USの権威あるリサーチ団体であるARF(Advertising Research Foundation)も、
昨年からlisteningの重要性に着目して、その方法を探究しています。


●以下では、ARFから得た資料The ARF Listening Playbookの紹介を行います。

●まずAFR団体の紹介です。http://www.thearf.org/

-1936年に創立。広告やマーケティング、メディア業界をリードする
専門情報(fact-based thought-leadership)と提供する専門団体。

現在、 広告主や広告会社、メディア会社、調査会社約350社が加盟。

本部はニューヨーク。Journal of Advertising Researchを発行。


●本資料は6章構成になっています。

 
第1章でリスニングの理論的背景を述べています。基礎編です。

第2章で、マーケティング課題別にその適用例を説明しています。

第3章でリスニングの具体的なソリューション・ツールについて説明しています。
リサーチャーにとって、おもしろい部分です。

第4章ではリスニングの可能性について提案しています。
リスニングがマーケティングや広告をどのように変えてゆくかを展望しています。

第5章は、前職の同僚であり、ARFのChief Research Officerである
Joel Rubinsonが、リスニングによってマーケティング・リサーチが
どのように変革されるかについて論じています。

最後の第6章は、リスニング関係のUSの会社について紹介しています。
これは役立ちます。

最後は、用語や文献の紹介です。
Social mediaのさまざな専門用語の解説も役立ちます。


●「はじめに」で言っているように、次の4つの質問に答えようとしています。

①1つはリスニングとは何かwhat is listening、

②どのように使われるかhow is it used、

③どのように実践されるかhow is it done、

④今後はどの方向に向かっているのかwhere is it headed。


************************************************************************


●目次は、
  
序文
はじめに Introduction
The ARF Listening Playbookの使い方
謝辞

第1章 リスニングの本質

リスニングの定義

本書の焦点ブランドがリスニングしなければいけない理由 Why Brands Listen

リスニングの構造The Structure of a Listening Initiative

リスニングがブランド目標の達成に貢献する理由
Objectives That Listening Helps Brands Achieve

リスニング・リサーチの利用 Research Uses for Listening

ブランド・リスニングの場所 Where Brands Listen

ブランドがリスニングする相手 Who Brands Listen To

オンライン上の声の代表性とデータの質の問題
Representative Nature of Online Voices and Data Quality

ブランド・リスニングのアプローチ方法 Brands’ Listening Approaches

リスニングでブランドが測定するもの What Brands Measure Through Listening

リスニング・マーケティングに向けて Towards a Listening-inspired Marketing Science

リスニングの挑戦と機会 Listening Challenges and Opportunities



第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用
Casebook: Putting Listening to Work

新規顧客の発見 Discover New Customers

新製品開発とイノベーション Drive New Product Development and Innovation

メッセージの形成と精緻化 Shape and Sharpen Messaging

既存製品の改善 Improve Existing Products

販売モメンタムの維持 Maintain Sales Momentum

ブランド成長の動因 Drive Brand Growth

ブランド再構築とリポジショニングRebrand and Reposition

企業やブランド、顧客に影響する課題の解決
Tackle Issues That Affect Your Company, Brand and Customers

評判のマネジメント  Manage Reputation

ブランド・ヘルスのマネジメント  Manage Brand Health

顧客のケア  Customer Care

顧客ロイヤルティと顧客価値の向上  Increase Loyalty and Customer Value


第3章 リスニング・ソリューション 
Listening Solutions

リスニング・ソリューションのタイプ  Types of Listening Solutions

SEOとメディア・モニタリング  Search Engines and Media Monitoring

テキスト分析のためのソフトウエア・ソリューション Text Analysis Software Solutions

フルサービス・リスニング会社 Full-Service Lsitening Vendors

オフラインとオンラインの口コミ  Offline and Online Word-of-Mouth

バズ会社と口コミ・プログラム  Buzz Agencies and Instigated Word of Mouth Programs

個別のブランド・コミュニティ Private Branded Communities


第4章 最先端:リスニング・マーケティング科学と、
メディア戦略、組織デザイン
Cutting Edges: Listening-inspired Marketing Science, Media Strategy and Organizational Design

会話(投入量)シェアとマーケットシェア
Conversational Share of Voice and Share of Market

結果の予測  Predicting Outcomes

会話の金銭的価値  Monetary Value of Conversations

注意点:予測におけるの情緒とデータの質の役割 
Bear in Mind: The Role of Sentiment and Data Quality in Prediction

リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング  
Listening-lead Media Research, Audience Targeting, Planning and Testing

組織デザインと発展  Organization Design and Development

リスニングの可能性 The Promise of Listening


第5章 リスニングとマーケティング・リサーチの変革
by Joel Rubinson, CRO, The ARF


第6章 関連企業プロフィール: リソース・ガイド 
A Resource Guide

SEOとメディア・モニタリング会社
テキスト分析会社 フルサービスのリスニング会社
オフラインとオンラインの口コミ会社
口コミ会社
オンライン・コミュニティ会社

参考資料

用語集
参考文献
索引
著者について 

************************************************************************

●私が専門とするSocial Media Researchは、非常に新しい分野です。
Digital consumer plannerにとって、Social media researchの方法は
欠かすことができません。


しかし、この用語自体まだ定着していない感があります。

Social mediaの動向をリサーチするものと誤解されるかもしれません。

そうではなく、Marketing research by using social mediaといったほうがよいかもしれません。

Social media marketing researchでは少し長いでしょう。

カナダのあるリサーチャーは、research wtihout survey researchとも言っています。

つまり、従来のランダム・サンプリング(対象者の代表性)や調査バイアスなどに
固執するサーベイ・リサーチとは異なる方法

ー従来の方法は代表性などに固執するあまり、
消費者インサイトの発見面でうまく機能していないー

である点を強調しています。(私とのメールで)

本資料は、この分野を理論的にまとめた最初のものです。未だ発展・開発途上にあります。

今後、その内容もSocial Mediaの進展とともに変化してゆくでしょう。

既存のマーケティング・リサーチを大きく変革することが期待されています。

現在USでは、MROCsという言葉が定着しつつあります。
これはMarketing Research Online Communitiesの略です。

早くて安く柔軟に消費者を調査することができる「オンライン・コミュニティ」は、
従来のインターネット調査での「オンライン・パネル」に対応する言葉です。

USでは、インターネット・リサーチをもはや「伝統的調査」の中に分類する人もいます。

リスニングはMROCsにおける有力な方法です。


●次回は、第1章からさらに詳しく見てゆきたいと思います。ご期待下さい。◆


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2010年2月1日月曜日

リバー・サンプリング法

●デジタル・コンシューマーを探究する上で、
インターネット調査は欠かせません。
早くて、安く調査を行う大きな利点があります。

●自著の『図解入門』80-81頁でも、
ネット調査の問題点を指摘しました。
日本での検証調査も紹介しました。

●アメリカのARF(Advertizing Research Foundation)は、
一昨年ネット調査の信頼性と代表制についての
大規模な検証調査を行いました。

17のオンライン・パネルと
電話/郵送調査の結果を
2つの期間で比較することによって
その信頼性の検証を行いました。

同一パネルの2つの期間の結果には一貫性が
見られたけれでも、パネル間の結果には
大きな違いがあり、

さらに電話/郵送調査とも異なった結果で
あったと報告しています。

1人の対象者が複数のオンライン・パネルに
重複登録する問題点や、

回答の信頼性などが検証されています。

り返し調査に参加する、
いわゆる「Professional respondent」の問題が
指摘されています。

●USのDMS Insightsというオンライン調査会社が、
Professional respondent対策として、
リバー・サンプリング法River samplingを提唱しています。

フレッシュ・サンプルで、代表性を出すために
複数のサイトから、その利用者に対して、
広告などを通して、調査対象者をリクルートする方法です。

事前にオンライン・パネルに登録された人々ではありません。
その限りでは、フレシュ・サンプルと言えます。

●しかし、厳密に言えば、抽出フレームのベースが
インターネット利用者集団であり、
それが全人口を代表するものではない点において、
その「代表性」には疑問が持たれます。

●リバー・サンプリングの問題点の詳細については、

USの代表性のあるオンライン・パネルの提供を標榜する

KnowledgePanel®の担当者が書いた、

River Samples: A Good Catch for Researchers? を参照。◆


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