2011年1月24日月曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (8) ブランド再構築とリポジショニング ①

<第47回>


Steve Rappaport The ARF Listening Playbook


リスニング・マーケティング:Social Media時代の新しい消費者調査 の第39回目です。

「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第13回目です。

これまで以下に示す本書の6章のうちの1章、3章、4章、5章を紹介してきました。

あとは事例紹介の第2章と、リスニング関連のUSの企業紹介の第6章が残っています。

第6章の日本版も作成する必要があります。

第1章 リスニングの本質

第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用

第3章 リスニング・ソリューション

第4章 最先端:リスニング・マーケティング科学と、メディア戦略、組織デザイン

第5章 リスニングとマーケティング・リサーチの変革

第6章 関連企業プロフィール: リソース・ガイド 

前回までに、第2章の事例の紹介の半分が終了しました。Listeningの有効性が理解できます。

1.新規顧客の発見

2.新製品開発とイノベーション

3.メッセージの形成と精緻化

4.既存製品の改善

5.販売モメンタムの維持

6.ブランド成長の動因

今週から、

7.ブランド再構築とリポジショニングRebrand and Reposition

8.企業やブランド、顧客に影響する課題の解決
Tackle Issues That Affect Your Company, Brand and Customers

9.評判のマネジメント Manage Reputation

10.ブランド・ヘルスのマネジメント Manage Brand Health

11.顧客のケア Customer Care

12.顧客ロイヤルティと顧客価値の向上 Increase Loyalty and Customer Value

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7.ブランド再構築とリポジショニング



ブランドが、リスニングによって得た消費者インサイトをプランやプログラムに変換できた時に初めて、リブランディングやリポジショニングが成功する。

以下の事例は、正しい消費者の声を聞いて、彼らの声にオープンであったブランドが、そのチャンスを改善することができることを表している。



ロイヤル・ユーザーをリスニング:Tropicana Pure Premiumの事例



ペプシコのゲータレードやペプシコーラを含むビッグ・ブランドを活性化する広範なイニシアティブの一貫として、トロピカーナ・ピュア・プレミアム・オレンジ・ジュースは、そのマーケティングを改良しようとした。

トロピカーナは、2009年の始めに、新しい広告キャンペーン(「スクイーズ」)を導入し、オレンジとストローのイメージのアイコンをグラス一杯のジュース・イメージに変更しようとした。

6週間後に、抗議の声がオンラインやオフライン上で殺到した。それでトロピカーナは、新パッケージを取りやめ、古いパッケージに戻した。どうしてだろうか。

この質問に答えて、トロピカーナの社長は、次のように述べている。「最もロイヤルな顧客がオリジナルのパッケージに持っていた深い情緒的な絆を過小評価した。それはリサーチでは出てこなかったものである」

グルインをやったり、デザインをテストをすることによって、トロピカーナと代理店は、ロイヤルな顧客のパッションを完全に理解することに失敗した。

彼らのリサーチへの参加者は、トロピカーナのイメージについて強い感情を持っていなかった。それゆえに、変更することについて、自信を持ってしまった。

これは、リスニングの専門家によって指摘される重要なポイントを表している。すなわち、どの質問を誰に行うべきかについて、我々は常に理解していないのである。

ブランドと代理店は、正しい手順を行ったと考えられるけれども、彼らが意図していたこととは正反対の結果に終わってしまった。つまり混乱と顧客の疎外である。

もしトロピカーナと代理店は、初期の段階で顧客、特にロイヤルな顧客に関わり、リスニングを行っていれば、パッケージが伝達している100%ジュースと品質感、そして、ブランドと最も献身的な顧客との間の情緒的な絆を評価するシグナルをもっと深く理解することができたであろう。

トロピカーナは、リデザイン・プランのどの側面が共感し、どの側面が共感しないかを理解したり、ブランドをさらに適切なものにするための価値ある示唆をえることができたであろう。(どのように行うかについては、例えばLadies’ Home Journalの事例を参照)

パッケージの問題は別にして、「スクイーズ」広告自体は、特に父親のイメージとして強く認識された。

リデザインはアイディアをブランドに組み入れる方法をリスニングは示唆しているように思える。

導入後のコメントは、トロピカーナが状況を非常に明確に理解し、結果的にブランドがうまく対応することを助けた一方、当惑をもたらし、パッケージ・デザインや製造、広告の変更や再制作に2倍以上のコストがかかるといった代償を生んだ。それは、ブランドの評価と支出に影響を与えた。

トロピカーナや同様なタイプの経験をした他の企業、例えばニュー・コークの事例のように、従来の古いシンボルやフォーミュラを変更することは、嵐を静めることでもある。

しかし、同時に次のような疑問を投げかける。すなわち、企業は市場を取り戻すことができるのだろうか。あるいは、顧客をリスニングし、関与することによって、企業は、絆を取り戻し、ブランドをより大きく成長する新たな方法を発見できるのだろうか。


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*このブログは毎週月曜日に更新されます。

★来週は、都合により「お休み」です。次回は、2月7日(月)です。ご了承下さい。



2011年1月17日月曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (7) ブランド成長の動因 ③

<第46回>

Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:Social Media時代の新しい消費者調査 の第38回目です。

「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第12回目です。


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3) 発売後のフィードバック収集のためのコミュニティの活用:Ore-Ida Steam n’ Mashの事例



http://www.oreida.com/products/steam-n-mash.aspx


H.J.ハインツ社のじゃがいもをベースとした冷凍食品ブランド






あるソーシャル・ネットワークのサイトは、見込み客の製品トライヤル促進し、コメントや会話、投票、調査からフィードバックを得、ブランドへアドバイスをするために設定される。


これら作業は、こどもや男性、女性間で参加者を調整するために、通常は登録とプロフィール紹介が必要である。


デジタル・エイジェンシーであるRazorfishとソーシャルネットワークサイトであるCafeMomは、このようなサイトは、オンラインに詳しい母親にアピールすることに気づいた。


彼らの包括的なDigitalMoms研究は、「ソーシャル・ネットワークは、母親がアドバイスや商品の推奨をすることが心地よいことであることに気づくことを手助けする」ことを発見した。


母親に単に近づくというよりは、信頼できる母親間の相互作用を通して、ブランド・メッセージを形成し広げるために、彼らは母親に関与することを勧めている。


このようなリスニングの機会を理解することによって、Ore-Idaは、新製品を本格展開する間、インサイトを得るためにコミュニティを利用することを決めた。


じゃがいもの有力なブランドであるOre-Ida(H.J.Heinzの一部門)は、快適な主食といろいろな味のマッシュドポテトを作るために、簡単で早くすることによって、忙しい母親が食事の時間を簡略化することを助けることを追求した。


冷凍食品であるSteam n’Mashは、皮をむき事前にカットされたじゃがいもを電子レンジ可能なバッグに入れ、ミルクとその他の材料を加えて攪拌するような説明が付けられている。


トライアル購買を刺激し、口コミを形成し、インサイトのためのフイードバックを得るために、Ore-Ideは、SheSpeaksを使った。SheSpeaksは招待制の女性のみのソーシャル・ネットワークであり、調査目的とブランド経験を作るために明らかにデザインされたという特徴を持っている。


SheSpeaksは、そのメンバーが「毎日インフエンサー」であると思っている。


参加した16,000人の母親は、無料の商品と、追加の購入のためのクーポンを受け取った。情報カードや無料のポテトマッシャーと共に、これらのプレミアムは、自分自身で使っても良いし、友人とシェアしてもよい。


参加者は、基本的な情報を共有するために、まずプリテスト用紙に記入を行った。


プロジェクトがひとたび進行すると、この「ポテト・マム」は、詳細な情報や、アイディアの入手、ディスカッション・フォーラムのために、テスト・センター(マイクロ・コミュニティ)にアクセスした。そこでは、メンバー同志が会話を行ったり、プログラム最終評価調査を行った。


ソーシャル・ネットワークゆえに、母親は、ブログを書いたり、コメントしたり、その他のSheSpeaksのメンバーと交流を行った。


さらに、母親は、Modern MommyhoodやNifty Thriftyのような他のサイトでブログを作ったりコメントを行った。そこでは、口コミを広げたりリスニングされる意見を述べた。


ブランディングの観点から、プログラムは大きな数字を達成した。


認知率や、購買、推奨意向といった伝統的な指標が2倍近くになった。


口コミは120万の女性に到達した。


100万近くの投稿や評価調査の詳細な分析から集めたインサイトによって、Ore-Idaの問題についての重要な知識が与えられ、ブランド・パーセプションやセールス、満足度に影響を与える改善が示唆された。


Ore-IdaがSheSpeakes momsをリスニングした時、チームは次のようなことを学んだ。


1)彼らは、お店で製品を見つけることができなかった。というのは、パッケージデザインがよく似ていたり、製品の在庫がなかったりした、


2)ある人は、価格が非常に高いと思った、


3)またある人は、味が非常によくないので、改善する必要があった、


4)当初の分量が少し少なかった(彼らは、もう少し大きなパッケージを望んだ)


Ore-Idaは、既存品の改善だけでなく、皮ごとゆでるようなライン拡張にも観察を利用した。


彼らが、SheSpeaksの参加者に発見能力の問題をどのように表すかを尋ねた時、Ore-Idaは200以上の示唆を生み出した。それらは、分類され、母親に改善を推奨するために利用された。


リスニングのインサイトに基づくことによって、Ore-Idaは、新製品開発の時間を半分に短縮した。ハインツのCEOであるウイリアム・ジョンソンは、Steam n’Mashは、会社の歴史上、最も成功した新製品であると考えていると語った。


WOMマーケティング協会の大学セッションで発表した時、ブランド・マネジャーのキンバリー・ロングは、リスニングは、確実な製品の流通を助けたと述べた。なぜなら、Ore-Idaは、会話の豊富さや母親のポテトへの情熱を表すデータを示した。


ラングは次のように述べている。リスニングは、Ore-Idaのツールキットの標準的なパーツとなるだろう。そして、その他のハインツ・ブランドは、そのアプローチや結果に関心を示している。



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