2010年3月29日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第8回)

今回は、ARFのThe ARF Listening Playbookの



「第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の


第4節の紹介です。


1.会話量シェアと市場シェア(前回)


2.結果の予測 (今回)


3.会話の貨幣的価値


4.注意事項: 販売の予測におけるセンチメント(好意度)の役割と、データの品質


5.リスニングによるメディア・リサーチ、視聴者ターゲティング、プラニング、広告テスト


6.組織デザインと発展


7.リスニングの可能性


が続きます。 






**********************



5.リスニングによるメディア・リサーチや、視聴者ターゲティング、プラニング、広告テスト







これまでのマーケティングの発展に加えて、リスニングによるメディアの変革が現在起こっている。


広告主や広告会社は、視聴者の特定や、広告テスト、コミュニケーションのターゲティング、メディア

計画といった最も基本的な業務を行う新たな方法を模索している。






(1)テレビ視聴意向






テレビの視聴は、1970年代以降のビデオの普及によって、厳密なスケジュールにそった生活行

動から、より柔軟で、オンディマンド形式に移行した。


テレビは「見たい時にみる」という現実が広く浸透している。それで大学で広告やマーケティングの

授業の時に、「決まった時間にテレビを見る」といった考え方を学生に説明する場合、目新しいもの

で、例をあげて意味を説明しなければならない。


学生にとって、「となりのサインフェルド」や「フレンド」といったアメリカの人気テレビ番組が放送され

ている間、全米中の機能がストップしたことは信じられないことである。






マスメディア時代のテレビ視聴者は、現在に比べると選択肢は少なく、テレビ視聴というのは儀式

的なものであった。


エンターテイメント番組の多さや、技術によって柔軟に対応できる状況の中で、メディア会社や広告

主は、次のことを知りたいであろう。


すなわち、人々はこの番組やあの番組を見るのだろうか。またそれぞれの番組についてどのように

思うのだろうか。


これらの問題の答えをえることによって、その影響を最大化するために、番組のストーリーや登場

人物を変更したり、販促やマーケティング、メディア戦略を修正するかどうかをブランドが決定しや

すくなる。






リスニングのデータは、視聴意向の指標を開発するために使われる。


リスニングのフルサービス企業であるコレクティブ・インテレクト社は、


ゴールデンタイムのテレビ番組をランキングする方法を開発した。


インテレクト社は、リスニング・ツールを使って、それぞれの番組についての口コミの分析を行い、

視聴意向や、類似性や好意的、否定的な関係性を調べた。


収集したデータにターゲット属性やジャンル、放映日などのウエイトづけをして分析を行った。


「テレビ視聴意向」レポートという形で、シンジケート・データ・サービスとして販売した。






図60.リスニングのデータは、テレビ番組視聴意向を示すために使われるようになった。ソース:Collective Intellect






レポートの抜粋は、今週人々が見たい番組のリストを示している。平均視聴は番組シーズンが始ま

って以降の視聴意向の値である。


週ベースで出される論評とトレンド報告が、番組と視聴者との関係の強さについてのインサイトを提

供してくれる。


短期的には、この情報は広告を目標視聴率に近づけるために戦術的に使用される。


また長期的には、リスニング・データは将来の視聴率を予測するためのモデル構築に活用さ

れる。そのモデルは、新番組の成功の予想や、メディア計画、広告のバイイングなどのいろ

んな目的に利用されるものである。






2)広告テスト: 広告好意度の予測






広告テストには、広告好意度の尺度が多くの場合含まれる。というのは、好意度が、リコールや態

度変化、推奨といった広告の効果を推定する質問と関連性があるからである。(スミスら、2006)






TNSシンフォニーは、彼らのリスニング・ツールセットで測定した好意的な感情の指標であるソーシ

ャル・メディア好意度が、伝統的に測定される広告好意度と相関があることを発見した。


TNS好意度インデックスに基づき11のトップ・ブランドを取り上げ、さらに3つのブランドを付け加え

た。






表2.8.ソーシャル・メディア好意度は、伝統的な広告好意度と相関がある。ソース:TNSシンフォニー






シンフォニーの分析は相関関係を明らかにした。


シンフォニーのジム・ネイルは次のように述べている。「ソーシャル・メディア好意度は、伝統的な方

法で測定される広告好意度の代用になるものである」


(ネイル、2008)


メディア会社は、解決不能な困難な問題に直面する。


テレビは広告メディアとして最も重要なものであったkれども、個々の番組の視聴者の数はどんどん

少なくなり、さまざまなメディアに分散される状況である。


メディア会社は、長年、視聴者の質に焦点を当てることに注力してきた。


リスニング分析の到来とともに、メディア会社は、行動指標のような間接的な指標から、人々がブラ

ンドや広告について実際どのようなことを言っているとか行っているかを理解する方向に向かって

いる。


ESPNとCNNの2つの例から、以下のことを学ぶことができる。すなわち、どのようにすれば、リス

ニングによって、視聴者をより深く理解することができるか、また、広告がどのように機能するか、

どのようにすれば、広告主がメデイア投資からより価値を得ることができるかといったことである。


リスニングを通して、メディア会社は、広告主と到達してほしい視聴者とを効率よく結び付ける「会話の適合性」の点から視聴者を選別し始めた。


ここで取り上げた事例から、ターゲティングやプラニングといった業界で確立された基本的なプラク

ティスの方法が変わって行く可能性を見ることができる。






3)メディア・オーディエンスの特定






NFLとカレッジ・フットボールの中継番組での13のブランドの広告と、放送後の口コミとの関係を

SPNは、リスニングの専門家であるケリー・フェイと共同で調べた。






1週間に1度行っているケラー・フェイのTalkTrack®という全国調査を使って、ESPNの視聴者は、

そうでない視聴者よりも、広告主に関連した口コミを行っていたことを発見した。


口コミは、放送日の当日にピークに達し、その後も番組を見なかった人々よりも高い頻度で広告主

に関連した口コミを行っていた。


2つのブランドを取り上げ、全国的な会話の規模を推定して、広告を見たことから自然となされた口

コミにより8000万から9000万に及ぶ会話の増大が起こったとケラー・フェイは推定している。


さらに、テレビとESPN.COMの両方でフットボールのゲームを見た人、つまり関与度が高いと思

われる人は、どちらかでしかゲームを見なかった人よりもずっと口コミの量が多かったことも分かっ

た。






図61.ESPNでの広告が口コミを誘発。小売企業のTV広告を見ていたファンの人々が、8000万以上のブランドについての口コミを生んだ。ソース:ESPN






ESPNのリサーチと分析部門のSVPであるアーティ・バルグリンによれば、これらの結果は、

広告のクロス・プラットフォーム戦略を正当化や、視聴後の広告の影響の推定、メディア計画や

広告スケジューリングの相互作用や効果を理解に役立つものである。


以上のようなリスニングによるインサイトによって、広告主とESPNとの間の議論が変わってきてい

るとバルグリンは語っている。(ケラーとバルグリン、2009)






4)ブランドについての会話に基づくターゲット・オーディエンス






視聴者は、番組や登場人物、広告自体よりも、ブランドやその他のことについてより多く会話してる。


CNNもケリー・フェイと共同で、 視聴者はケーブル・テレビよりも車、例えばレキサスについて日々

多くの会話をしていることを突き止めた。


ESPNの発見と同様、会話をよくする人は、テレビやWEBもよく使っていた。


事実、CNNの視聴者には、レキサスについて集中的に会話する人々が存在した。


全人口に比べて、彼らは4倍もブランドについて言及していた。






図62.テレビとWEBの両方を使っているCNNの視聴者は、全人口と比べて4倍も多くレキサスに

ついて語っていた。ソース:CNN






CNNの広告販売リサーチのSVPであるグレッグ・リーブマンは次のように語っている。これらのデ

ータは、我々の視聴者が、他のネットワークの視聴者と比べて、どの商品やサービスについて多く

語っているかを知ったり、広告主や新規の顧客にCNNの価値を示すのに役立つものである。


(ケラーとリーブマン2009、シタインバーグ2009よりの引用)






5)メディア・プラニング






会話の話題と会話の場所の相互作用が起こっている。これが新たな科学ではないとしたら、メディ

ア・プランニングにとっては新たな芸術と言える。






分析のために会話は、リスニング・リサーチによって、トピックスとサブ・トピックスに分類されるとい

うことを本書で述べてきた。


リスニングのフルサービス企業であるコンバージョン社は、クライアントのためにブロードバンドの話

題について調べた。


エスキモー・アレウト語が、雪を表すのに7つの言葉を持っていたり、画家が色を区別するさまざま

な用語を持っているように、言葉というものは、ある特定の文脈で使用されるものである。


ブロードバンドを語る時も同じである。


コンバージョン社は、人々が次の4つの文脈で、ブロードバンドを語っていることに気付いた。

つまり、クライアントのブランドを語る場合や、モバイル・ブロードバンド、固定ブロードバンド、ブロー

ドバンドによる高精細テレビ放送である。(ボウズ1911、キー2009)






さまざまな会話がどこで起こり、その場所の品質を評価することによって、ソーシャル・メディアのプ

ラニングが可能になる。


この事例の場合、コンバージョン社は、ソーシャル・メディアを特定し、それらを品質と会話の適切

性によって、分類、評価づけを行った。


この事例では、ブランドやモバイル、固定ブロードバンドについて技術的な議論を行うには、フォー

ラムが最も適していることが分かった。


高品位テレビ(HDTV)の場合は、熱狂者が多く集まるブログが適している。


コンバージョン社のCEOであるキーによれば、場所やサービスの提供は、地理的にさまざまなの

で、会話のベストな場所は、プロバイダーやロケーションによって特定されるものである。






表3.話題の会話が起こる場所を理解したり、その場所のランキングづけを行うことは、ソーシャ

ル・メディア・プラニングに役立つ。 ソース:Converseon



★姉妹ブログ みんなのMR.COMもよろしくお願い致します。



《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》

2010年3月23日火曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第7回)

●今回は、ARFのThe ARF Listening Playbookの


「第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の

第4節の紹介です。

1.会話量シェアと市場シェア(前回)

2.結果の予測 (今回)

3.会話の貨幣的価値

4.注意事項: 販売の予測におけるセンチメント(好意度)の役割と、データの品質

5.リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング

6.組織デザインと発展

7.リスニングの可能性

が続きます。 

**********************


第4節 注意事項: 販売の予測におけるセンチメント(好意度)の役割と、データの品質

擁護(アドボカシー)と影響(インフルエンス)を測定するために、次の2つの企業が用いている方法は、センチメント(好意度)をどう扱うかという重要な点において異なっている。

MotiveQuest社のオンライン・プロモーター・スコアは、多くの企業同様、センチメントを含んでいる。

これとは対照的に、オナリティカのマドソンは、そのモデルの中にセンチメントを含んでいない。場合によってはセンチメントを含めることもあるけれども、一般的には、センチメントを含めない方がよい結果を得ることができると述べている。

マドソンはその理由を次のように説明している。

「ブランドが好意的な文脈で語られたり、率直に推奨されたりすると、より多くの販売が期待されると考えられるだろう。他の条件が同じであれば、否定的よりは好意的な文脈で語られる方が、通常はブランドにとって好ましいと言える。しかし、ブランドが否定的な文脈で語られる時は、次の2つの相反する力が働くことを忘れてはいけない。最初の力は、否定的な力である。つまり、否定的な文脈なので、それを読んだ人はそのブランドに対して好意を持つ可能性は低くなる。しかし、 そのブランドについて述べられていること自体が、ブランドへの親しみを増し、消費者の心に中に強く残るゆえに、好意的な力が働くことにもなる。」

しかし、この2つの方法は、このような違いがあるにせよ、販売と高い相関関係があり、その予測力は高いと言える。

このことは、この分野のさらなる研究や議論の必要性と、ブランドにとって、リスニングの測定とモデル化の考え方を理解することが必要であることを強く示唆している。

上の例は、リスニングの結果が、「軽い」会話といったテーマ以上のものであることを意味している。

すなわち、リスニングの結果は、ブランドのパフォーマンスを理解するための貴重なモデリングや分析、予測に役だつ重要な「強固な」数字に置き換えることができる。



1)データ品質

会話の内容は、うまく行われているものから、あいまいであったり、全く矛盾するものなど、さまざまである。

調査結果と同様にリスニングの結果は、合意された品質基準を満たしたデータの存在の有無に左右される。

そのようなデータが存在することによって、モデルや統計、結果、提言、ブランド・アクションについて確信を持つことができる。

リスニング関連の企業は、多くの場合、データの妥当性や信頼性を保証する品質管理を行っていることが、我々の調査で明らかになった。

ある企業は、品質管理は非常に重要であると認識し、他社と差別化するものであると考えている。

このようなデータの認証と信頼によって、リスニング方法が発展すると考えられる。

この意味で、現在が業界のデータ品質基準が確立される上で絶好の機会であると言える。


★姉妹ブログ みんなのMR.COMもよろしくお願い致します。



《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》

2010年3月15日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第6回)

●今回は、ARFのThe ARF Listening Playbook

「第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」

第3節の紹介です。(この節は短いです)

1.会話量シェアと市場シェア(前回)

2.結果の予測 (今回)

3.会話の貨幣的価値

4.注意点:予測における情緒とデータの質の役割 

5.リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング

6.組織デザインと発展

7.リスニングの可能性が続きます。 


**********************


第3節 会話の貨幣的価値



次の問題に焦点をあてることから始めよう。

会話の中で紹介することが、どれくらいの金銭的価値があるのだろうか。

無料のオンライン・サービスへの新規登録に対する伝統的なマーケティング手法や、

口コミ、プロモーションとの関係性を調べたある研究がある。

その研究では、ブランドがえる金額は、9カ月間の新規加入者数の拡大によって

増加したディスプレイ広告収入額として計算されている。(Trusov et al 2009)

また、さまざまな新規登録の動機付けの効果を特定したモデルを開発している。

1日、3日、7日の3つの時点と、それ以上の期間にわたって、

それぞれのマーケティング・プログラム別に登録数や

弾力性(各施策の%変化に対する新規登録の%変化)を調べている。

その結果、他の方法よりも、口コミがより多くの新規登録を生み出し、

その効果がより長く続いたことがわかった。


図59.オンライン・サービスの新規登録に対する口コミの影響力は、広告やプロモーションを上回

った。その影響力は時間とともに大きくなった。ソース:Trusov et. al. (2009)


Trusovのチームによると、新規登録1件当たりの増加収入は、年間約0.75ドルであった。

このような結果を再び得ることができれば時間が証明することになるけれども、

上の研究は、会話が売上を生み出すパワーを持っていることを十分示唆していると言える。




★姉妹ブログ みんなのMR.COMもよろしくお願い致します。



《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》

2010年3月8日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第5回)

●今回は、ARFのThe ARF Listening Playbook

第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の

第2節の紹介です。

1.会話量シェアと市場シェア(前回)

2.結果の予測 (今回)

3.会話の金銭的価値

4.注意点:予測における情緒とデータの質の役割 

5.リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング

6.組織デザインと発展

7.リスニングの可能性が続きます。 



**********************


第2節 リスニングによる結果の予測



 1)現在の予測


 2)セールスの予測


   ①セールスと影響力シェアの関係


   ②セールスと、オンライン・プロモーター・スコア(OPS)の関係


 3)市場シェアの予測


   ①オンライン上の支持と市場シェアの関係


   ②影響トレンド・シェアと市場シェアの関係



オンライン上の会話によって、将来の出来事を予測することができるかどうかは、ブランドにとって重要なことである。予測ができれば、ブランドに、より良い意思決定や、資源の有効活用、ビジネスの成功、良い財務的結果をもたらしてくれるだろう。



以下では、2つのリスニング視点から、結果の予測の課題を検討することにする。

それらは、検索ベースと会話ベースによる、センチメントと影響力の2つである。



1)現在の予測



グーグルのエコノミスト達は、検索トレンドと、小売販売金額や自動車や住宅、旅行の販売といった経済指標との関係性を探る最前線にいる。これらのシェア・データには、タイムラグが存在していることが特徴である。例えば、6月の自動車販売台数は、7月の第2週の火曜日までわからない。しかし、数字は予備的なもので、少なくともその後2回は修正される。



このようなギャップを埋めることによって、月内での測定によって、月末の結果を予測することができれば、ブランドのセールスを最大にしたり、その減少を最小に食い止めるための何らかの行動をとることができることを意味している。グーグルは既に、グーグル・トレンド・データが存在する場合としない場合によって、短期の結果を予測する経済モデルを開発、比較し、「現在を予測する」ことができるかどうかの研究を進めている。

公式の販売統計とは異なり、グーグル・トレンド・データは、週単位で集計されるので、タイミングよく、人々の会話を追跡することができる。グーグルのチョイとヴァリアンは、何度もモデルの検証を繰り返すことによって、グーグル・トレンド・データは、予想以上の予測力を示した、と結論づけている。特に自動車とか部品、住宅などでは、非常に良い結果をえた。

現在、市場の変化を予測するターニング・ポイントを発見できるかどうかの研究がさらに進められている。



2)セールスの予測



初期に考えられた課題の1つは、オンライン上の口コミから、本の販売を予測することができるかどうか、といたものであった。

Dan Gruhlと彼の同僚たちは、2000冊以上の本の約50万にもおよぶセールス・ランキング・データを収集・分析することによって、オンライン上の書き込みと本のセールとの関係を調べた。彼らは、これまでに次の2つの結論を慎重に導き出している。1つは、検索によって、セールス・ランキングを予測する書き込みの量を把握することは可能である。2つ目は、セールス・ランキングの急上昇を予測することはできるだろう。

これらの発見は、予測のために口コミを使う価値があることを示すとともに、次の重要なポイントを指摘している。

予測の結果は、データの品質にかかっている。書き込みを発見し収集するための検索作業は、慎重な手作業の結果である。検索は自動化可能であるけれども、かなりの経験を要するものである。予測分析を行うブランドが、そのデータの品質に注意をはらっているのは賢明なことである。



結果の予測をより進化させるためには、単に書き込み数といった口コミの数だけでは不十分である。正確な予測には、より先進的なリスニング分析、とりわけ影響力指標を含んだ分析が必要である。

以下では、リスニングの威力を示す市場シェアやセールス、テレビ視聴意向、広告テストに関連した例を取り上げることにする。

ここでは、自動車の販売の2つの例を取り上げることにする。



①セールスと影響力シェアの関係


オナリティカ社は、日産の2つのモデルー有名なPathfinderと、新しく導入されたQashqaiの販売を予測するために「影響力シェア」の指標を用いた。その結果、影響力シェアと販売との間に関連性が見られた(ピアソンの積率相関係数で、それぞれ0.99と0.98)。それぞれの車のモデルは、ユニークな関連性を示した。

Pathfinderの場合、影響力シェアは、1カ月以内にセールスに影響を与えたけれども、Qashqaiのセールスの変化には、約1カ月のズレが見られた。



図55.影響力シェアは、販売トレンドを予測したけれども、その関連性は、車のモデルによって異なった。ソース:オナリティカ社


追加のリスニング・リサーチによって、関係性がより説明されたり、直接的なブランドの活動が取られたりすることが可能である。例えば、関係性のパターンの違いは、車のモデルの成熟度や、モデルの消費者の知識、購入前に集められる情報の程度を反映しているだろう。新しいブランドの場合、知ったばかりで、専門家のアドバイスを聞いたりすることは理解できるので、長い検索期間が必要になる。しかし、古くあるブランドの場合、購入前に、その特徴や、価格、快適性などの情報を素早くアップデートするだけで十分である。加えて、影響力があるのは誰かとか、彼らはどこにいるのか、また何を言っているのかなどをリスニングすることは、ブランド戦略を考える上で役立つものである。



②セールスにおけるオンライン・プロモーター・スコア(OPS)


フルサービスのリスニング会社であるMotiveQuest社は、オンライン・プロモーター・スコア(OPS)を開発した。それは、ロイヤルティの専門家であるフレッド・ライクヘルドのネット・プロモーター・スコア(NPS)に似たものである。

彼らは、ノースウエスタン大学の協力のもとにOPSの開発を行った。

ここで示す例は、新製品の発売を行わないで、いかにBMWのMINIの販売をアップさせることができるか、といった事例である。

MotiveQuest社は、MINIのコミュニィの熱意のレベルを探るために、リスニングを行った。 OPSは、オンライン上で、他の人にブランドを推奨する人の数を測定するものである。OPSは、ブランドについての書き込みを集計し、その人が積極的なブランドの支持者であるかどうかを決定する「MotiveQuestセンチメント・ツール」によって測定される。


2006年1月から2007年4月間のデータ分析によって、OPSとセールスには、それぞれの変化の間に、1カ月のタイムラグの関係性があることがわかった。さらに、OPSとセールスの関係を相関図に表すと、非常に高い相関関係が見られた(信頼水準99.8%)

MotiveQuest社のトム・オブライエンによると、セールスは、OPSの値の増減によって53%の増減を示した。



3)市場シェアの予測



以下では、市場シェア・トレンドを説明し、予測する2つの例を見よう。1つはオンライン上の支持、もう1つは影響力シェアに関連するものである。



①オンライン上の支持と市場シェア



市場シェアへの支持の影響を説明するために、少し前に紹介したHDTVフラットパネル・テレビのソニーとサムスンの例を取り上げることにする。ソニーは伝統あるブランドであり、市場においてその優位性を保っている:すなわち、ソニーは、競合よりも高いブランド・エクイティや認知率を持っている。チャレンジャーであるサムスンは、エクイティや認知では、ソニーやパナソニックに次ぐ3番手である。

しかし、2008年の調査では、サムスンの販売シェアは23%で、トップであった。ソニーとパナソニックは、それぞれ6%と11%の差でサムスンを追っていた。

この逆転の理由を探るために、ネイルとチャップマンは、TNSシンフォニのリスニング・ツールを使って、ソーシャル・メディア上のブランドについての会話の分析を行った。サムスンは、会話量シェアの点でソニーを上回っていた以外に、書き込みを通して一体感をもつサムスンの支持者の数は、ソニーを大きく上回っていたことを彼らは発見した。支持者はサムスンに対する考え方や熱意を共有し、好意的な書き込みの数はソニーよりも多かった。

これらの優位点は、サムスンの販売力を説明するのに役立つものである。

予測の点から、これらのリスニング手法は、消費者の動きに連動して、継続的かつ定期的に、予測モデルに組み入れることが可能である。



図56.サムスンの市場シェアは、オンライン上の会話によって支えられていることをデータは物語っている。 ソース:TNSシンフォニ



②影響力トレンド・シェアと市場シェア



イギリスのフルサービス・リスニング会社であるオナリティカ社は、「影響力シェア」と、ブランドとの関係に注目して、市場シェアの予測手段として、そのトレンドを使っている。オナリティカ社の影響力シェアは、オンライン上の会話につける「ウエイト」を意味している。例えば、たくさんのフォロアーを持っている人が、ブランドについて書いた場合、そうでない人が書いたよりも多くのウエイトが付けられる。同様に、ある出版物は、他のものより、より多くの「ウエイト」を持つ。

この例のように、オナリティカ社は、5カ月間での相対的影響力に応じてウエイトを付けることによって、アキュビューや、オプティックス、ソフレンズといったコンタクト・レンズの口コミに注目した。



図57.影響力トレンド・シェアから市場の変化を予想することができる: ソース:オナリティカ



図57は、メイン・ブランドであるアキュビューの影響力が徐々に低下しているのを表している。この傾向が続けば、マーケット・シェアが低下する可能性が高くなる。

このトレンドによって、マーケティング・コミュニケーションの有効性がわかる。

オナリティカ社の創立者であるFleming Madsenは、次のように語っている。

ブランドの影響力シェアは、ブランドのマーケティング・コミュニケーションの有効性が低下したり、競合のブランドのコミュニケーション費用が増加した時に、通常は減少する。

影響力シェア、あるいは影響力全体をトラッキングすることによって、競合のコミュニケーション費用の変化を追跡することも可能である。◆



★姉妹ブログ みんなのMR.COMもよろしくお願い致します。

《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》

2010年3月1日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第4回)

●今回は、ARFのThe ARF Listening Playbookの


「第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の紹介です。

今回はその第1節部分です。


1.会話量シェアとマーケットシェア

この後、2.結果の予測

3.会話の金銭的価値

4.注意点:予測における情緒とデータの質の役割 

5.リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング

6.組織デザインと発展

7.リスニングの可能性が続きます。 

Twitterで、今回は、ヘネシー・コニャックやジレット・フユージョンなどへの
リスニングの活用を紹介している
「第2章事例の紹介: リスニングの活用」と、予告したのですが、
より重要な第4章から紹介することにしました。ご了承下さい。


第1章でリスニングの基本理解と、第2章でブランドへの具体的活用例、
第3章ではリスニングの具体的方法、そしてこの今回の4章の後に、
リスニングによって、既存のマーケティング・リサーチがどのように変わるか、
最後にリスニング・サービスを欧米で提供している企業の紹介になります。

●原著であるThe ARF Listening Playbookを作成した
ARFのスティーブ・ラパポート Steve Rappaport(ARF Knowledge Solutions Director)は、
ベストセラーである’The Online Advertising Playbook: Proven Strategies and Tested Tactics from the Advertising Research Foundation' (Wiley 2007)の著者でもあります。

Playbookは、ご存知のように、アメフトなどでフォーメーションなどの戦略・戦術を収録したものです。『マーケティング・プレイブック』参照。



**********************


第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、


メディア戦略、組織デザイン


リスニングによって、生の会話を数量化することができることは、
そのビジネス・ツールとしての可能性を広げるものである。

リスニング指標は、リスニングと、ブランドの財務結果との関連性
示すために開発、検証、使用されている。

それは、会話量シェア(conversational share of voice)
市場シェアとの関連の研究や、
市場シェアの動向やセールスを予測するために、
検索やセンチメントやインフルエンス・データを使用する研究において行われている。

また口コミと、売上との関係を証明する新たな研究がある。
それは、市場シェアとセールスとの間に相関があることを説明するのに役立つものである。
さらに、メディア研究においても、リスニング・リサーチの応用例が存在している。
例えば、テレビの視聴率や、視聴者の特定、メディア計画、広告テストなどである。

1.会話量シェアとマーケットシェア

Jim PeckhamのThe Wheel of Marketing (1981)は、ブランドの広告投下量と、
市場シェアとの関連性を示した最初の本である。
両者の関連性については、これまでも活発に研究され、関心を持ち続けられている。

IPA(Institute of Practitioners in Advertising)ニールセン分析コンサルティングは、
両社の持つ豊富な研究をもとに、
「いかに広告量は市場シェアに勝つか」という報告書を発表している。

広告量についての知見は、戦略や戦術を立案する
マーケティング関係の投資計画によく利用される。

このような背景のもと、広告量/市場シェアの関係の分析を
リスニング分析に応用するのは当然の流れである。

以下では、会話量シェアと市場シェアとの関係や、
会話を促進する消費者の熱意(passions)や
マーケティング・コミュニケーションについての
最新の研究成果を検討してゆくことにする。

研究がさらに進めば、会話量/市場シェアの考え方と、
これまでの研究との類似点と相違点を指摘することができるだろう。
さらに、経済状況が良い時や悪い時におけるブランドの活動指針を
提示できるような原則をマーケット・リーダーや、チャレンジャー、新規参入者に
示すことも可能になるだろう。

1)会話量シェアと市場シェアの関連

TNSシンフォニーニールセンの研究によると、
IPA/ニールセン報告書で言及された広告量シェアと市場シェアとの関連性は、
会話メディアにおいても当てはまる。

TNSシンフォニーは、シリアル製品における会話量シェアと市場シェアとの関係性を検討した。

図52.会話量シェアと市場シェアとは相関がある (ソース:TNSシンフォニー) (以下図は省略)

ニールセン・オンラインによると、会話量と市場シェアとの関係性が、
コストコやサムズ・クラブ、BJ’sなどのウエアハウス・クラブ(問屋型小売)
において見られた。

図53.バズ量シェアと市場シェアとは相関がある(ソース:ニールセン)

2)超過シェア

ブランドの広告量シェアが市場シェアよりも大きい場合、広告量の超過である。
IPA/Nielsenの報告書によると、超過したシェアは、成長を生む。
つまり、10%の超過シェアは、0.5%のマーケット・シェアの増加を生む。
しかし、その効果は、ブランドによってさまざまである。
リーディング・ブランドほどその増加は大きく、およそ3倍の1.4%である。

この関係が、会話量シェアにもあてはまるかどうか、あるいはそうでない場合は
どのように変化するか、今後の研究によって明らかになるだろう。

もし同様な効果があるとすれば、コストコは、シェアを維持、あるいは
増加させる良い状況にあると考えられる。(Clarke 2009).

3)会話量シェアを左右する顧客の熱意(passions)や関与(engagement)、
マーケティング・コミュニケーション

ブランドは、会話量シェアを生み出し、維持し、成長させる力から恩恵を受ける。
顧客の熱意や関与、マーケティング・コミュニケーションが、
いかに会話を促進するかを理解しているブランドは、
会話量シェアと市場シェアを増加させる戦略を立案する上で
優位に立っていると言える。

このような戦略がリスニングによって裏付けられている場合、
その戦略はより妥当性があり、共感するものである。

i)顧客の熱意

ニールセン・オンラインによれば、コストコの不釣り合いの会話量シェアの大きさは、
コストコ・コミュニティによる異常なまでの草の根的な顧客の熱意によってもたらされている。

コストコの会員達は 製品―特にプライベイト・ブランドは、
「安くて」、「あまり高くない」製品であり、
かつナショナル・ブランドに匹敵する品質を持っているという強い確信を持っていることが、
リスニング分析によって明らかになった。
全店の会話を詳しく分析した結果、コストコのKirklandブランド名が言及されていた。

ファンの人々の熱意として、次のような例がある。
コストコは、Facebookに自社の公式ページをもっていないけれでも、
顧客自らが作ったファン・ページにおよそ5万人のファンが存在している。
コストコのライバルであるBJ’Sのページはたった200人のファンしかいない。
(Swedowsky2009)

ii)情緒的関与

会話のリスニングや行動の観察、あるいはバイオメトリクス(生体認証)のシグナルを通して、
情緒的な関与は認識される。
インナースコープのカール・マーチ(Carl Marci)と彼の同僚は、
バイオメトリクスによって、情緒的関与と広告効果の関係を研究している。

彼らのスーパーボールのコマーシャルの研究は、
「広告がダウンロードされ、オンライン上で見られた回数や、
オンライン上でコメントされた回数と、有意な相関が見られる」関与度の影響を調査している。

言い換えれば、情緒的関与が大きければ大きいほど、
オンラインの会話量シェアに貢献するダウンロードやバズも多くなる。(Siefert et al 2009).

iii)マーケティング・コミュニケーション

マーケティング・コミュニケーションは、ブランドについての会話を促進する。
広告やプログラム、パブリシティ、ニュースによって、
人々はブランドについての多くの情報をえる。(Keller & Liebman 2009; Nail 2008)

iv)広告量のウエイト変化

広告量のウエイト変化は、ソーシャル・メディアにおける会話のレベルを向上させる。

ソニーとサムソンのHDTVフラットパネル・テレビ販売競争についての
TNSシンフォニーの分析によると、

競合を上回る広告量や、クリスマス・シーズンのような重要な販売時期といった
広告のタイミングが、
オンライン上の会話を増加させ、会話量シェアに変化を起こし、
ブランドに販売のモメンタムを与える。(Nail & Chapman 2008)

図54 2008年のクリスマス商戦時に、サムソンがソニーの2倍の費用をかけた
戦術的支出は、オンライン上の会話量シェアの増加をもたらした◆


★姉妹ブログみんなのMR.COMもよろしくお願い致します。

《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》