2010年3月1日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第4回)

●今回は、ARFのThe ARF Listening Playbookの


「第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の紹介です。

今回はその第1節部分です。


1.会話量シェアとマーケットシェア

この後、2.結果の予測

3.会話の金銭的価値

4.注意点:予測における情緒とデータの質の役割 

5.リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング

6.組織デザインと発展

7.リスニングの可能性が続きます。 

Twitterで、今回は、ヘネシー・コニャックやジレット・フユージョンなどへの
リスニングの活用を紹介している
「第2章事例の紹介: リスニングの活用」と、予告したのですが、
より重要な第4章から紹介することにしました。ご了承下さい。


第1章でリスニングの基本理解と、第2章でブランドへの具体的活用例、
第3章ではリスニングの具体的方法、そしてこの今回の4章の後に、
リスニングによって、既存のマーケティング・リサーチがどのように変わるか、
最後にリスニング・サービスを欧米で提供している企業の紹介になります。

●原著であるThe ARF Listening Playbookを作成した
ARFのスティーブ・ラパポート Steve Rappaport(ARF Knowledge Solutions Director)は、
ベストセラーである’The Online Advertising Playbook: Proven Strategies and Tested Tactics from the Advertising Research Foundation' (Wiley 2007)の著者でもあります。

Playbookは、ご存知のように、アメフトなどでフォーメーションなどの戦略・戦術を収録したものです。『マーケティング・プレイブック』参照。



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第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、


メディア戦略、組織デザイン


リスニングによって、生の会話を数量化することができることは、
そのビジネス・ツールとしての可能性を広げるものである。

リスニング指標は、リスニングと、ブランドの財務結果との関連性
示すために開発、検証、使用されている。

それは、会話量シェア(conversational share of voice)
市場シェアとの関連の研究や、
市場シェアの動向やセールスを予測するために、
検索やセンチメントやインフルエンス・データを使用する研究において行われている。

また口コミと、売上との関係を証明する新たな研究がある。
それは、市場シェアとセールスとの間に相関があることを説明するのに役立つものである。
さらに、メディア研究においても、リスニング・リサーチの応用例が存在している。
例えば、テレビの視聴率や、視聴者の特定、メディア計画、広告テストなどである。

1.会話量シェアとマーケットシェア

Jim PeckhamのThe Wheel of Marketing (1981)は、ブランドの広告投下量と、
市場シェアとの関連性を示した最初の本である。
両者の関連性については、これまでも活発に研究され、関心を持ち続けられている。

IPA(Institute of Practitioners in Advertising)ニールセン分析コンサルティングは、
両社の持つ豊富な研究をもとに、
「いかに広告量は市場シェアに勝つか」という報告書を発表している。

広告量についての知見は、戦略や戦術を立案する
マーケティング関係の投資計画によく利用される。

このような背景のもと、広告量/市場シェアの関係の分析を
リスニング分析に応用するのは当然の流れである。

以下では、会話量シェアと市場シェアとの関係や、
会話を促進する消費者の熱意(passions)や
マーケティング・コミュニケーションについての
最新の研究成果を検討してゆくことにする。

研究がさらに進めば、会話量/市場シェアの考え方と、
これまでの研究との類似点と相違点を指摘することができるだろう。
さらに、経済状況が良い時や悪い時におけるブランドの活動指針を
提示できるような原則をマーケット・リーダーや、チャレンジャー、新規参入者に
示すことも可能になるだろう。

1)会話量シェアと市場シェアの関連

TNSシンフォニーニールセンの研究によると、
IPA/ニールセン報告書で言及された広告量シェアと市場シェアとの関連性は、
会話メディアにおいても当てはまる。

TNSシンフォニーは、シリアル製品における会話量シェアと市場シェアとの関係性を検討した。

図52.会話量シェアと市場シェアとは相関がある (ソース:TNSシンフォニー) (以下図は省略)

ニールセン・オンラインによると、会話量と市場シェアとの関係性が、
コストコやサムズ・クラブ、BJ’sなどのウエアハウス・クラブ(問屋型小売)
において見られた。

図53.バズ量シェアと市場シェアとは相関がある(ソース:ニールセン)

2)超過シェア

ブランドの広告量シェアが市場シェアよりも大きい場合、広告量の超過である。
IPA/Nielsenの報告書によると、超過したシェアは、成長を生む。
つまり、10%の超過シェアは、0.5%のマーケット・シェアの増加を生む。
しかし、その効果は、ブランドによってさまざまである。
リーディング・ブランドほどその増加は大きく、およそ3倍の1.4%である。

この関係が、会話量シェアにもあてはまるかどうか、あるいはそうでない場合は
どのように変化するか、今後の研究によって明らかになるだろう。

もし同様な効果があるとすれば、コストコは、シェアを維持、あるいは
増加させる良い状況にあると考えられる。(Clarke 2009).

3)会話量シェアを左右する顧客の熱意(passions)や関与(engagement)、
マーケティング・コミュニケーション

ブランドは、会話量シェアを生み出し、維持し、成長させる力から恩恵を受ける。
顧客の熱意や関与、マーケティング・コミュニケーションが、
いかに会話を促進するかを理解しているブランドは、
会話量シェアと市場シェアを増加させる戦略を立案する上で
優位に立っていると言える。

このような戦略がリスニングによって裏付けられている場合、
その戦略はより妥当性があり、共感するものである。

i)顧客の熱意

ニールセン・オンラインによれば、コストコの不釣り合いの会話量シェアの大きさは、
コストコ・コミュニティによる異常なまでの草の根的な顧客の熱意によってもたらされている。

コストコの会員達は 製品―特にプライベイト・ブランドは、
「安くて」、「あまり高くない」製品であり、
かつナショナル・ブランドに匹敵する品質を持っているという強い確信を持っていることが、
リスニング分析によって明らかになった。
全店の会話を詳しく分析した結果、コストコのKirklandブランド名が言及されていた。

ファンの人々の熱意として、次のような例がある。
コストコは、Facebookに自社の公式ページをもっていないけれでも、
顧客自らが作ったファン・ページにおよそ5万人のファンが存在している。
コストコのライバルであるBJ’Sのページはたった200人のファンしかいない。
(Swedowsky2009)

ii)情緒的関与

会話のリスニングや行動の観察、あるいはバイオメトリクス(生体認証)のシグナルを通して、
情緒的な関与は認識される。
インナースコープのカール・マーチ(Carl Marci)と彼の同僚は、
バイオメトリクスによって、情緒的関与と広告効果の関係を研究している。

彼らのスーパーボールのコマーシャルの研究は、
「広告がダウンロードされ、オンライン上で見られた回数や、
オンライン上でコメントされた回数と、有意な相関が見られる」関与度の影響を調査している。

言い換えれば、情緒的関与が大きければ大きいほど、
オンラインの会話量シェアに貢献するダウンロードやバズも多くなる。(Siefert et al 2009).

iii)マーケティング・コミュニケーション

マーケティング・コミュニケーションは、ブランドについての会話を促進する。
広告やプログラム、パブリシティ、ニュースによって、
人々はブランドについての多くの情報をえる。(Keller & Liebman 2009; Nail 2008)

iv)広告量のウエイト変化

広告量のウエイト変化は、ソーシャル・メディアにおける会話のレベルを向上させる。

ソニーとサムソンのHDTVフラットパネル・テレビ販売競争についての
TNSシンフォニーの分析によると、

競合を上回る広告量や、クリスマス・シーズンのような重要な販売時期といった
広告のタイミングが、
オンライン上の会話を増加させ、会話量シェアに変化を起こし、
ブランドに販売のモメンタムを与える。(Nail & Chapman 2008)

図54 2008年のクリスマス商戦時に、サムソンがソニーの2倍の費用をかけた
戦術的支出は、オンライン上の会話量シェアの増加をもたらした◆


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