2010年3月8日月曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第5回)

●今回は、ARFのThe ARF Listening Playbook

第4章 最先端: リスニング・マーケティングと、メディア戦略、組織デザイン」の

第2節の紹介です。

1.会話量シェアと市場シェア(前回)

2.結果の予測 (今回)

3.会話の金銭的価値

4.注意点:予測における情緒とデータの質の役割 

5.リスニング志向のメディア・リサーチ、ターゲティング、プラニング、テスティング

6.組織デザインと発展

7.リスニングの可能性が続きます。 



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第2節 リスニングによる結果の予測



 1)現在の予測


 2)セールスの予測


   ①セールスと影響力シェアの関係


   ②セールスと、オンライン・プロモーター・スコア(OPS)の関係


 3)市場シェアの予測


   ①オンライン上の支持と市場シェアの関係


   ②影響トレンド・シェアと市場シェアの関係



オンライン上の会話によって、将来の出来事を予測することができるかどうかは、ブランドにとって重要なことである。予測ができれば、ブランドに、より良い意思決定や、資源の有効活用、ビジネスの成功、良い財務的結果をもたらしてくれるだろう。



以下では、2つのリスニング視点から、結果の予測の課題を検討することにする。

それらは、検索ベースと会話ベースによる、センチメントと影響力の2つである。



1)現在の予測



グーグルのエコノミスト達は、検索トレンドと、小売販売金額や自動車や住宅、旅行の販売といった経済指標との関係性を探る最前線にいる。これらのシェア・データには、タイムラグが存在していることが特徴である。例えば、6月の自動車販売台数は、7月の第2週の火曜日までわからない。しかし、数字は予備的なもので、少なくともその後2回は修正される。



このようなギャップを埋めることによって、月内での測定によって、月末の結果を予測することができれば、ブランドのセールスを最大にしたり、その減少を最小に食い止めるための何らかの行動をとることができることを意味している。グーグルは既に、グーグル・トレンド・データが存在する場合としない場合によって、短期の結果を予測する経済モデルを開発、比較し、「現在を予測する」ことができるかどうかの研究を進めている。

公式の販売統計とは異なり、グーグル・トレンド・データは、週単位で集計されるので、タイミングよく、人々の会話を追跡することができる。グーグルのチョイとヴァリアンは、何度もモデルの検証を繰り返すことによって、グーグル・トレンド・データは、予想以上の予測力を示した、と結論づけている。特に自動車とか部品、住宅などでは、非常に良い結果をえた。

現在、市場の変化を予測するターニング・ポイントを発見できるかどうかの研究がさらに進められている。



2)セールスの予測



初期に考えられた課題の1つは、オンライン上の口コミから、本の販売を予測することができるかどうか、といたものであった。

Dan Gruhlと彼の同僚たちは、2000冊以上の本の約50万にもおよぶセールス・ランキング・データを収集・分析することによって、オンライン上の書き込みと本のセールとの関係を調べた。彼らは、これまでに次の2つの結論を慎重に導き出している。1つは、検索によって、セールス・ランキングを予測する書き込みの量を把握することは可能である。2つ目は、セールス・ランキングの急上昇を予測することはできるだろう。

これらの発見は、予測のために口コミを使う価値があることを示すとともに、次の重要なポイントを指摘している。

予測の結果は、データの品質にかかっている。書き込みを発見し収集するための検索作業は、慎重な手作業の結果である。検索は自動化可能であるけれども、かなりの経験を要するものである。予測分析を行うブランドが、そのデータの品質に注意をはらっているのは賢明なことである。



結果の予測をより進化させるためには、単に書き込み数といった口コミの数だけでは不十分である。正確な予測には、より先進的なリスニング分析、とりわけ影響力指標を含んだ分析が必要である。

以下では、リスニングの威力を示す市場シェアやセールス、テレビ視聴意向、広告テストに関連した例を取り上げることにする。

ここでは、自動車の販売の2つの例を取り上げることにする。



①セールスと影響力シェアの関係


オナリティカ社は、日産の2つのモデルー有名なPathfinderと、新しく導入されたQashqaiの販売を予測するために「影響力シェア」の指標を用いた。その結果、影響力シェアと販売との間に関連性が見られた(ピアソンの積率相関係数で、それぞれ0.99と0.98)。それぞれの車のモデルは、ユニークな関連性を示した。

Pathfinderの場合、影響力シェアは、1カ月以内にセールスに影響を与えたけれども、Qashqaiのセールスの変化には、約1カ月のズレが見られた。



図55.影響力シェアは、販売トレンドを予測したけれども、その関連性は、車のモデルによって異なった。ソース:オナリティカ社


追加のリスニング・リサーチによって、関係性がより説明されたり、直接的なブランドの活動が取られたりすることが可能である。例えば、関係性のパターンの違いは、車のモデルの成熟度や、モデルの消費者の知識、購入前に集められる情報の程度を反映しているだろう。新しいブランドの場合、知ったばかりで、専門家のアドバイスを聞いたりすることは理解できるので、長い検索期間が必要になる。しかし、古くあるブランドの場合、購入前に、その特徴や、価格、快適性などの情報を素早くアップデートするだけで十分である。加えて、影響力があるのは誰かとか、彼らはどこにいるのか、また何を言っているのかなどをリスニングすることは、ブランド戦略を考える上で役立つものである。



②セールスにおけるオンライン・プロモーター・スコア(OPS)


フルサービスのリスニング会社であるMotiveQuest社は、オンライン・プロモーター・スコア(OPS)を開発した。それは、ロイヤルティの専門家であるフレッド・ライクヘルドのネット・プロモーター・スコア(NPS)に似たものである。

彼らは、ノースウエスタン大学の協力のもとにOPSの開発を行った。

ここで示す例は、新製品の発売を行わないで、いかにBMWのMINIの販売をアップさせることができるか、といった事例である。

MotiveQuest社は、MINIのコミュニィの熱意のレベルを探るために、リスニングを行った。 OPSは、オンライン上で、他の人にブランドを推奨する人の数を測定するものである。OPSは、ブランドについての書き込みを集計し、その人が積極的なブランドの支持者であるかどうかを決定する「MotiveQuestセンチメント・ツール」によって測定される。


2006年1月から2007年4月間のデータ分析によって、OPSとセールスには、それぞれの変化の間に、1カ月のタイムラグの関係性があることがわかった。さらに、OPSとセールスの関係を相関図に表すと、非常に高い相関関係が見られた(信頼水準99.8%)

MotiveQuest社のトム・オブライエンによると、セールスは、OPSの値の増減によって53%の増減を示した。



3)市場シェアの予測



以下では、市場シェア・トレンドを説明し、予測する2つの例を見よう。1つはオンライン上の支持、もう1つは影響力シェアに関連するものである。



①オンライン上の支持と市場シェア



市場シェアへの支持の影響を説明するために、少し前に紹介したHDTVフラットパネル・テレビのソニーとサムスンの例を取り上げることにする。ソニーは伝統あるブランドであり、市場においてその優位性を保っている:すなわち、ソニーは、競合よりも高いブランド・エクイティや認知率を持っている。チャレンジャーであるサムスンは、エクイティや認知では、ソニーやパナソニックに次ぐ3番手である。

しかし、2008年の調査では、サムスンの販売シェアは23%で、トップであった。ソニーとパナソニックは、それぞれ6%と11%の差でサムスンを追っていた。

この逆転の理由を探るために、ネイルとチャップマンは、TNSシンフォニのリスニング・ツールを使って、ソーシャル・メディア上のブランドについての会話の分析を行った。サムスンは、会話量シェアの点でソニーを上回っていた以外に、書き込みを通して一体感をもつサムスンの支持者の数は、ソニーを大きく上回っていたことを彼らは発見した。支持者はサムスンに対する考え方や熱意を共有し、好意的な書き込みの数はソニーよりも多かった。

これらの優位点は、サムスンの販売力を説明するのに役立つものである。

予測の点から、これらのリスニング手法は、消費者の動きに連動して、継続的かつ定期的に、予測モデルに組み入れることが可能である。



図56.サムスンの市場シェアは、オンライン上の会話によって支えられていることをデータは物語っている。 ソース:TNSシンフォニ



②影響力トレンド・シェアと市場シェア



イギリスのフルサービス・リスニング会社であるオナリティカ社は、「影響力シェア」と、ブランドとの関係に注目して、市場シェアの予測手段として、そのトレンドを使っている。オナリティカ社の影響力シェアは、オンライン上の会話につける「ウエイト」を意味している。例えば、たくさんのフォロアーを持っている人が、ブランドについて書いた場合、そうでない人が書いたよりも多くのウエイトが付けられる。同様に、ある出版物は、他のものより、より多くの「ウエイト」を持つ。

この例のように、オナリティカ社は、5カ月間での相対的影響力に応じてウエイトを付けることによって、アキュビューや、オプティックス、ソフレンズといったコンタクト・レンズの口コミに注目した。



図57.影響力トレンド・シェアから市場の変化を予想することができる: ソース:オナリティカ



図57は、メイン・ブランドであるアキュビューの影響力が徐々に低下しているのを表している。この傾向が続けば、マーケット・シェアが低下する可能性が高くなる。

このトレンドによって、マーケティング・コミュニケーションの有効性がわかる。

オナリティカ社の創立者であるFleming Madsenは、次のように語っている。

ブランドの影響力シェアは、ブランドのマーケティング・コミュニケーションの有効性が低下したり、競合のブランドのコミュニケーション費用が増加した時に、通常は減少する。

影響力シェア、あるいは影響力全体をトラッキングすることによって、競合のコミュニケーション費用の変化を追跡することも可能である。◆



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