2010年11月26日金曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (5) 既存製品の改善

<第42回>


Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:

Social Media時代の新しい消費者調査 の第35回目です。

「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第8回目です。



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既存製品の改善







商品発売後、マーケターや広告マンは、そのブランドを社会的や文化的、経済的変化やライフスタイル上の変化において、常に現在的に維持しなければいけない課題に直面する。


新たに発生したり未充足のニーズに対して、適切でかつ進化する製品は、一般的には、顧客に幸せを付加し、長い生命を持ち、企業にとっても長期にわたる財政的貢献をするものである。


Tideの象徴的なボックスや、洗浄力やエネルギー効率への特別な関心にフォーカスしているTideのColdwaterのようなP&Gが提供するすべての特定の製品について考えて見よう。


リアル・ビューティのDoveキャンペーンは、単に話題のあるトレンドを反映したものではない。女性や少女についてのグルーバル視点の長年にわたる包括的な理解に基づくものである。


偶然ではなく、これらのブランドは、リスニングに関連している。






コンテンツを新鮮で適切なものにする:BeingGirlの事例






2005年に、P&Gは、少女に関連した問題や関心を議論するためのBeingGirl.comという少女達だけのためのブランド・コミュニティを創設した。そこでは、市場やテスト中の製品について評価してもらったり、気分転換になるような情報を提供したりしている。


Tampax and Alwaysの女性用ケア・ブランドによってサポートされたサイトは、少女達に関連した個人の健康問題についての豊富な情報を含んでいる。


2007年までに、サイトは、18言語に翻訳され、200万人が登録し、世界中にアピールを行った。


少女の会話やコメント、共有されるコンテンツ、トラッキングされる商品、商品のレビューのマイニングの分析によって、P&Gは、少女のモチベーションや好き嫌い、彼女らの考え方の「理由」についてのインサイトを発見した。


さらに、P&Gは、前に述べたFiat MIOの例のように、自信を持って市場の変化への対応やイノベーションの能力強化を加速させる一方、顧客のグローバル理解を文化や国境を越えて、効率的かつ急速に獲得した。


インサイトを発見する一方、P&Gは、少女によって提起される課題やトレンドのトピックを注視することによって、コンテンツの定期的な再構成を行っている。


Tampax and Always(生理用品)は、テスト製品や既存ブランドについての議論や、問題を解決したり製品や少女の使用経験を強化するための改良について特に注意を払っている。


リスニングのベネフィットに加えて、BeingGirlは、売上にも貢献しているようである。


ブランドの角度からサイトを見ると、サイトでのチャットは、Tampax and Alwaysの購入検討に影響を与えているようである。


フォレスター・リサーチのアナリストであるJosh Bernoffによれば、BeingGirlは賢明な投資である。彼はコミュニティは、「伝統的なメディアにおける同じ金額のマーケティング施策よりも4倍有効である」と語っている。






コア・ブランドにユーザーが作った特徴を付加する:ツイッターの事例






ツイッターがリストとリツートという2つの製品イノベーションを行うという最近のニュースは、The New York Timesの第1面をかざった。


メインポイントはヘッドラインである。「ツイッターは、そのフォロアーからアイディアを引きだす」


企業は、ユーザーが何を行っているかを観察し、どの特徴が広くアピールするかを特定し、それらを改善し、中心の製品に組み入れて行く。


リスト機能は、有名人や政治家のような人々をより簡単にフォローするのを助けたり、彼らがフォローしている人から得た投稿を管理するのに役立つものである。


ツイート機能は、メッセージの転送と同じようなもので、ツイッターのその他の多くのアプリでも人気のあるものである。


リツイート機能は、ツイッター・ユーザーやリスニング企業にとって非常に重要なものになった。というのは、リツイートが個人の権威や影響力を測るファクターとして使われるからである。


リツイート機能は、重複した投稿を削除しーこれは管理を簡略化し、統一性を御改善したー、著作権を明確にし、人々がオリジナルの投稿を書き換えることを防ぐことによって、「フィールド・バージョン」を改善した。


ツイッターのこのコミュニティによる開発の実行能力は、そのプラットフォームや、創立者のEvan WilliamsやBiz Stoneの視点に関連するものである。


ツイッターは、ユーザーが予期していない利用方法を生みだすことを可能にする柔軟性と適応性の興味深いバランスの均衡を保っている。


相互に関わる多くの人々がいる場合、彼らが次に何を行うかを予測することは難しいだろう。


「なぜ人々はこれを使い、我々はそれをどのようにより良くできるだろうか」と言うだろう。






ユーザーを動かそう:NASCAR*の事例






*ナスカー、National Association for Stock Car Auto Racing, 全米自動車競争協会






NASCARのレースは騒がしいものである。騒音は、経験の一部でもある。


ESPNは、リスニング・リサーチからインサイトを発見した。それは、レースの観客は、彼らがあたかもレースを行っているかのような高揚を期待している。


ESPNはそれに答えた。


NASCARはそのファン協議会を通して、ファンの声のリスニングを行った。ファン協議会というのは、フルサービスのリサーチ・プロバイダーでブランド・コミュニティの管理会社であるVision Criticalが運営している12,000人のプライベイトなオンライン・コミュニティである。


リスニングを通して、NASCARは、レースの実況について、2つの主な改善を行った:1つは、よりエキサイティングなDouble File Restarts(2列再スタート)のルールの採用。もう1つは、テレビの実況時間の統一。


最初の例は、NASCARは、その案を発見し、実証した。


再スタート・ルールを実行し、さらにリスニングを継続した。


レビューは肯定的であった。


テレビの実況開始時間については、NASCARは議論についてのセンチメントを定量化した。


彼らは、2010年からNASCAR Sprint Cupシリーズを始める予定である。


これらが主な変更である。ファンのコメントによって生まれたものであり、画期的で、大胆な先例のないものであった。


すべてではないとしてもその多くの場合、競争のルールの変更は、ふつうは、ファンではなく、オーナーやリーグの管理会社、特別委員会が決める領域である。


オールスターゲームのような人気競技へのファン投票は別として、プロ野球の指名打者についてや、アメフトのフェアキャッチ*についてファンの意見に基づいて決定を行うことを創造することはほとんど不可能なことである。


*《アメフト》フェアキャッチ:相手側のキックしたボールを直接受けること.


NASCARの事例は、リスニングによるインサイトの力は、組織の上層部やブランドにおける主要なビジネス上の決定に影響を与えることを証明するものである。


NASCARのManaging Director of Market and Media ResearchであるBrian Moyerは、次のように指摘している。「ファン協議会は、企業の中に変化を生み出した。


ほとんどの部署は、スポーツに関連したさまざまなトピックのためにファン協議会を採用している。協議会のメンバーは、熱心なファンの代表であり、すばらしい仕事を行っている」


協議会への参加を希望している人々のウエイティング・リストがある。




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2010年11月19日金曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (4) メッセージの形成と精緻化

<第41回>


Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:

Social Media時代の新しい消費者調査 の第34回目です。


「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第7回目です。


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 メッセージの形成と精緻化



QSR(クイックサービスレストラン)の事例は、ブロガーや彼らの正確さ、観点への広告の影響を推測する、つまりインフルエンサーの分析―上でのリスニングの価値を表している。


我々の理解では、人々への広告の影響は、同一店におけるセールスの傾向によって評価される。


しかし、メッセージを形成し、さらに精緻化するドライバーの理解についてはどうだろうか。


この問題に答えるためには、アパレルやベビー・ケア、パーソナル・ケア、ゲーム、携帯電話の5つの異なったカテゴリーにおける事例を見ることにする。


最初の3つの事例は、リスニングと「アスキング」アプローチとの違いを理解し、さらにそれぞれがどのように補完しあっているかを特定するためのP&Gとニールセン・オンラインとの共同の作業によるものである。


P&GのKristin Bushとニールセン・オンラインのDavid Wiesenfeldは、次の2つの重要な結論を導いている。つまり、調査は、『何人の消費者が特定の見解を持つかを決めることが要求され。さらに、すべてのケースで、「リスニング」は、重要な方法でストーリーを強化した』


ある場合、リスニングは、ストーリーの発見には不可欠であった。((Wiesenfeld & Bush, 2009; Wiesenfeld et al 2009).






事例①ポップカルチャーのインサイトの開発: スナギーのケース






袖付き毛布(ブランケット)のスナギーのことは、よくご存じでしょう。最初は、テレビショッピングで販売され、現在はドラッグストアや量販店で広く買うことができる。


600万枚売れて成功した会社は、子供用のスナギーを発売した。


スナギーのいろいろな着る方法を示したユーモラスな広告は人々の関心を引いた。


しかし、David WiesenfeldとKristin Bushは、この商品の成功の背後にあるものを理解しようとした。


スナギーはP&Gのブランドではないけれども、彼らは、YouTubeを含むソーシャル・メディアのサイトから、過去のデータのリスニングの分析や、


商品やコマーシャル、文化的アピールを説明する特性を使った調査を行った。


スナギーはそのベネフィットを明確にコミュニケーションした機能的製品であったことを彼らの分析は当然のように明らかにした。


問題は、「それは本当の話であるけれども、メインなストーリーではない。


リスニングから集められたメインのストーリーは異なっていた」


リスニングは、スナギーをその機能的な領域を超えるポップ・カルチャーの象徴となる商品として描いていた。


商品の便益やコマーシャルの要素に集中した消費者のコメントは、しばしば冗談のようであった。


ポップカルチャーのストーリーは、調査では、特性の評価や自由回答のいずれにも表れてこなかった。






事例②実践と消費者の信念との結合:布製のおむつのケース






調査によって、布製のおむつへの関心が、規模は小さいけれでも復活していることが明らかになった。


親の2つの関心事は何か。それは、環境にやさしい商品と、妥当な価格な商品。


しかし、調査では、その理由は明らかではなかった。


「布製のおむつの会話」を発見し、分析することによって、リスニングが、家庭での出産や、教育、オーガニック・フードといった「自然な養育」プラクティスへの傾向を明らかにした。


さらに、布製おむつの利用者は、洗浄の問題と夜間の漏れのような現実問題を認識し、受け入れながら、トレードオフについて、微妙に語っていた。


これは余談であるけれども、この事例は、リスニング・リサーチの重要な能力を表している。すなわち、インサイトの展開に導いてくれる比較や対照、分析を可能にしてくれるおむつについてのすべての会話から、布製のおむつの会話を分離する能力である。


P&Gとニールセンは、次のように結論づけた。つまり、リスニングはストーリーをまとめあげる。しかし、『リスニングは、何人の消費者が、環境の理由で、あるいは費用の理由で布製のおむつを選択したかということは、確実に決定づけるものではない。


「アスキング」と「リスニング」は、布製のおむつの背後にあるフル・ストーリーを語る上で、それぞれ欠かせないものであった。』






事例③消費者のパーセプションとブランド広告:ジレット・フユージョンのケース






P&Gのジレット部門は、次のような状況に直面していた。深剃りを約束する5枚刃のフージョンの導入は、高い初年度の売上を生みだすけれども、次年度の替刃のセールスは低下するだろう。


ジレットは、この問題の解決するための調査で次のことを発見した。ユーザーは、フユージョンは、他のカミソリも同様に良いけれども値段が高いと思っていた。


リスニング分析によると、フージョンは他のかみそりよりも少し良いけれども、その分にお金を余分に払うほどではないとユーザーは、感じていた。


下の図は、サーベイ結果とリスニング結果を表している。


フージョンのポイントを見ることによって、競合商品のマッハ3との関係を見ることができる。フージョンは、価格面で高く、パフォーマンスではよりパワフルである。


対照的に、調査結果は、人々がフージョンの使用を中止した理由を示している。


ジレットのマーティングは、主な改良を要求しなかった。そのかわりに、「フユージョンはより優れた切れ味を提供し、その優位性に見合った価格を保証する必要があることを消費者に理解してもらう必要があった」と、DaveとKristinは我々に話してくれた。


リスニングでのインサイトを反映して、P&GのCFOであるJon Muellerは、次にように簡単に述べている。「我々は、消費者が、ジレット・フユージョンはベストな製品であり、それに見合った少しのお金を支払う価値があることを確信したい」


さらに付け加えて、「トライアルや新たなイノベーションの促進のためのメッセージは、我々の消費者とのコミュニケーションにおける主要な焦点であり継続されるだろう」






事例④顧客インサイトによるメッセージの: ハラーズのケース






カジノやスパ、ホテルを運営するハラーズは、消費者レビューやTripAdvisor.com上でのコメント、ツイッター、フェースブックから収集したリスニング・インサイトによって、そのウエッブサイトや、マーケティング・メッセージの修正を行った。


ハラーズは、旅行者がパリのラスベガスホテルからの「象徴的な景色」を語ったり、アメニティに関心があることを学ぶことによって、景色やホテル周辺のアトラクションを紹介するなどのホームページの変更を行った。また部屋の大きさやメニュー、その他の提供品についての詳細を伝えることを開始した。


リスニングの教訓は、オンラインの世界を超えて、より広いコミュニケーション戦略に影響を及ぼした。ハラーズのマーケティングVPであるMonica Sullivanは、ウエッブの広告によって、「オンライン予約が2ケタ増加した」ことを認めた。


さらに、ハラーズは「オンライン調査によって、部分的に活性化された一連のテレビや印刷、ラジオ、ウエッブの広告を実施している」ことを付け加えた。


ジレット・フユージョンとハラーズの事例は、リスニングがマーケティング課題にいかにインサイトを付加し、メッセージに非常に貢献し、市場での結果を改善することができるかをよく示している。


次に見るように、リスニングはまた、迅速な判断をするために戦術的に利用されうるものである。






事例⑤市場における広告の戦術的変更:携帯電話ブランドのケース






イギリスの企業であるOnalyticaは、プライム・タイムのテレビ広告に比重を置いた4カ月のキャンペーンを実施した携帯電話のグローバル・ブランドであるクライアントの話を述べている。


発売当初のバズの測定によって、広告が既存顧客と見込み客の間に混乱を生じさせたことを知った。


ブランドは、ポイントを明らかにするために少しの調整を加えた。


Onalyticaは次のように述べている。『キャンペーンの後半は、大きな成功であった。しかし、もし問題発覚のあと1時間を争うほどの速さで対応していなかったならば、このように成功しなかったであろう』


迅速に状況を判断し活動を示唆するリスニング能力は、ブランドが顧客と同じ立場にいることを手助けするものであることに、我々がインタビューを行った多くの人々は合意している。




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2010年11月4日木曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (3) 新製品開発とイノベーション その4

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<第40回>


Steve Rappaport The ARF Listening Playbook


リスニング・マーケティング:


Social Media時代の新しい消費者調査 の第33回目です。


「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第6回目です。




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2.2.5 新商品導入の評価: クイック・サービスレストランの例




もしあなたがフランチャイズ制の組織で働いた経験があれば、フランチャイジー(加盟店)の要求、特にプロダクト・マーケティングと広告における要求がいかに強いかをご存じでしょう。



彼らはお店が繁盛するために、商品とコミュニケーションが十分に機能することを強く望んでいる。



フランチャイジーは、商品や、価格、広告に対して、定期的に反乱を起こす。



若い顧客層を拡大するために、人気のあるクイック・サービスのレストラン・チェーンは、メニューを多くし、新しい広告を開発することを決定した。それは新商品を提供し、おもしろいキャンペーンを導入するものであった。



フランチャンジーは、キャンペーンが新商品の認知を上げ、売上を上げるかどうかを知りたがった。



ブランド(企業側)は、さらに投資を続けるべきかどうかを知る必要があった。



そこでブランドは、フルサービスのリスニング・ベンダーであるUmbriaを使った。彼らは、新しい広告が流れた最初の3カ月の間、ブランドや新商品について議論しているブログのモニターを行った。



オンラインで語られることは、しばしばオフラインの会話や広告に影響を受ける。



Umbriaは、広告支出やメディアプラン、広告スケジュール、バズの関係を分析した。



新しい広告キャンペーンは、「ブログのブランドについての投稿数に、即効かつ持続的に影響を与え、ポジティブやネガティブなブランドについての投稿の割合を急激に増加させた。



ブロガーは、広告を評価し、新メニュー商品を的確に指摘し、キャンペーンにおけるユーモアに好意的に反応した」とUmbriaは結論づけた。



お店の売り上げは、広告がヒットしたすぐ後に増加した。



フランチャイジーは、キャンペーンの成果や新商品に満足した。この結果に基づいて、ブランドは、勢いを維持するために、全国メディアにさらに投資を行ったと、Umbriaは報告している。




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