2010年11月19日金曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (4) メッセージの形成と精緻化

<第41回>


Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:

Social Media時代の新しい消費者調査 の第34回目です。


「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第7回目です。


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 メッセージの形成と精緻化



QSR(クイックサービスレストラン)の事例は、ブロガーや彼らの正確さ、観点への広告の影響を推測する、つまりインフルエンサーの分析―上でのリスニングの価値を表している。


我々の理解では、人々への広告の影響は、同一店におけるセールスの傾向によって評価される。


しかし、メッセージを形成し、さらに精緻化するドライバーの理解についてはどうだろうか。


この問題に答えるためには、アパレルやベビー・ケア、パーソナル・ケア、ゲーム、携帯電話の5つの異なったカテゴリーにおける事例を見ることにする。


最初の3つの事例は、リスニングと「アスキング」アプローチとの違いを理解し、さらにそれぞれがどのように補完しあっているかを特定するためのP&Gとニールセン・オンラインとの共同の作業によるものである。


P&GのKristin Bushとニールセン・オンラインのDavid Wiesenfeldは、次の2つの重要な結論を導いている。つまり、調査は、『何人の消費者が特定の見解を持つかを決めることが要求され。さらに、すべてのケースで、「リスニング」は、重要な方法でストーリーを強化した』


ある場合、リスニングは、ストーリーの発見には不可欠であった。((Wiesenfeld & Bush, 2009; Wiesenfeld et al 2009).






事例①ポップカルチャーのインサイトの開発: スナギーのケース






袖付き毛布(ブランケット)のスナギーのことは、よくご存じでしょう。最初は、テレビショッピングで販売され、現在はドラッグストアや量販店で広く買うことができる。


600万枚売れて成功した会社は、子供用のスナギーを発売した。


スナギーのいろいろな着る方法を示したユーモラスな広告は人々の関心を引いた。


しかし、David WiesenfeldとKristin Bushは、この商品の成功の背後にあるものを理解しようとした。


スナギーはP&Gのブランドではないけれども、彼らは、YouTubeを含むソーシャル・メディアのサイトから、過去のデータのリスニングの分析や、


商品やコマーシャル、文化的アピールを説明する特性を使った調査を行った。


スナギーはそのベネフィットを明確にコミュニケーションした機能的製品であったことを彼らの分析は当然のように明らかにした。


問題は、「それは本当の話であるけれども、メインなストーリーではない。


リスニングから集められたメインのストーリーは異なっていた」


リスニングは、スナギーをその機能的な領域を超えるポップ・カルチャーの象徴となる商品として描いていた。


商品の便益やコマーシャルの要素に集中した消費者のコメントは、しばしば冗談のようであった。


ポップカルチャーのストーリーは、調査では、特性の評価や自由回答のいずれにも表れてこなかった。






事例②実践と消費者の信念との結合:布製のおむつのケース






調査によって、布製のおむつへの関心が、規模は小さいけれでも復活していることが明らかになった。


親の2つの関心事は何か。それは、環境にやさしい商品と、妥当な価格な商品。


しかし、調査では、その理由は明らかではなかった。


「布製のおむつの会話」を発見し、分析することによって、リスニングが、家庭での出産や、教育、オーガニック・フードといった「自然な養育」プラクティスへの傾向を明らかにした。


さらに、布製おむつの利用者は、洗浄の問題と夜間の漏れのような現実問題を認識し、受け入れながら、トレードオフについて、微妙に語っていた。


これは余談であるけれども、この事例は、リスニング・リサーチの重要な能力を表している。すなわち、インサイトの展開に導いてくれる比較や対照、分析を可能にしてくれるおむつについてのすべての会話から、布製のおむつの会話を分離する能力である。


P&Gとニールセンは、次のように結論づけた。つまり、リスニングはストーリーをまとめあげる。しかし、『リスニングは、何人の消費者が、環境の理由で、あるいは費用の理由で布製のおむつを選択したかということは、確実に決定づけるものではない。


「アスキング」と「リスニング」は、布製のおむつの背後にあるフル・ストーリーを語る上で、それぞれ欠かせないものであった。』






事例③消費者のパーセプションとブランド広告:ジレット・フユージョンのケース






P&Gのジレット部門は、次のような状況に直面していた。深剃りを約束する5枚刃のフージョンの導入は、高い初年度の売上を生みだすけれども、次年度の替刃のセールスは低下するだろう。


ジレットは、この問題の解決するための調査で次のことを発見した。ユーザーは、フユージョンは、他のカミソリも同様に良いけれども値段が高いと思っていた。


リスニング分析によると、フージョンは他のかみそりよりも少し良いけれども、その分にお金を余分に払うほどではないとユーザーは、感じていた。


下の図は、サーベイ結果とリスニング結果を表している。


フージョンのポイントを見ることによって、競合商品のマッハ3との関係を見ることができる。フージョンは、価格面で高く、パフォーマンスではよりパワフルである。


対照的に、調査結果は、人々がフージョンの使用を中止した理由を示している。


ジレットのマーティングは、主な改良を要求しなかった。そのかわりに、「フユージョンはより優れた切れ味を提供し、その優位性に見合った価格を保証する必要があることを消費者に理解してもらう必要があった」と、DaveとKristinは我々に話してくれた。


リスニングでのインサイトを反映して、P&GのCFOであるJon Muellerは、次にように簡単に述べている。「我々は、消費者が、ジレット・フユージョンはベストな製品であり、それに見合った少しのお金を支払う価値があることを確信したい」


さらに付け加えて、「トライアルや新たなイノベーションの促進のためのメッセージは、我々の消費者とのコミュニケーションにおける主要な焦点であり継続されるだろう」






事例④顧客インサイトによるメッセージの: ハラーズのケース






カジノやスパ、ホテルを運営するハラーズは、消費者レビューやTripAdvisor.com上でのコメント、ツイッター、フェースブックから収集したリスニング・インサイトによって、そのウエッブサイトや、マーケティング・メッセージの修正を行った。


ハラーズは、旅行者がパリのラスベガスホテルからの「象徴的な景色」を語ったり、アメニティに関心があることを学ぶことによって、景色やホテル周辺のアトラクションを紹介するなどのホームページの変更を行った。また部屋の大きさやメニュー、その他の提供品についての詳細を伝えることを開始した。


リスニングの教訓は、オンラインの世界を超えて、より広いコミュニケーション戦略に影響を及ぼした。ハラーズのマーケティングVPであるMonica Sullivanは、ウエッブの広告によって、「オンライン予約が2ケタ増加した」ことを認めた。


さらに、ハラーズは「オンライン調査によって、部分的に活性化された一連のテレビや印刷、ラジオ、ウエッブの広告を実施している」ことを付け加えた。


ジレット・フユージョンとハラーズの事例は、リスニングがマーケティング課題にいかにインサイトを付加し、メッセージに非常に貢献し、市場での結果を改善することができるかをよく示している。


次に見るように、リスニングはまた、迅速な判断をするために戦術的に利用されうるものである。






事例⑤市場における広告の戦術的変更:携帯電話ブランドのケース






イギリスの企業であるOnalyticaは、プライム・タイムのテレビ広告に比重を置いた4カ月のキャンペーンを実施した携帯電話のグローバル・ブランドであるクライアントの話を述べている。


発売当初のバズの測定によって、広告が既存顧客と見込み客の間に混乱を生じさせたことを知った。


ブランドは、ポイントを明らかにするために少しの調整を加えた。


Onalyticaは次のように述べている。『キャンペーンの後半は、大きな成功であった。しかし、もし問題発覚のあと1時間を争うほどの速さで対応していなかったならば、このように成功しなかったであろう』


迅速に状況を判断し活動を示唆するリスニング能力は、ブランドが顧客と同じ立場にいることを手助けするものであることに、我々がインタビューを行った多くの人々は合意している。




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