2010年10月29日金曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (3) 新製品開発とイノベーション その3

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<第39回>


Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:

Social Media時代の新しい消費者調査 の第32回目です。

「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第5回目です。


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2.2.4 新製品の洗練化:メレディスMixing Bowl.comの例




多様なメディア・パワー企業であるメレディス・コーポレーションは、雑誌の発行を行ったり、放送局やいくつかのデジタル所有権を持っている。



企業の目標は、所有権が適切であり、その視聴者の品質が良いこと、さらにその組み合わせが、広告主にとって魅力的であることを保証することである。



メレディスの発行するBetter Homes & Gardens誌は、MixingBowl.comとその読者が読んでいるソーシャルネットワークによって、そのプリント上での存在を強化することを決定した。



このチームは、コンテンツやデザインについてかなりまとまったアイディアを持っていたけれども、Real Women Talking上で実際にそれらを検証したいと考えた。



メレディス・リサーチ・ソシューションは、ターゲットである女性の声をリスニングするために、コミュニスペースのプライベイト・コミュニティであるReal Women Talkingを運営している。



コミュニスペースは、コンセプト・テストを準備し、全体的印象や、ユニークさ、新しいサイトを使う可能性について尋ねた。



コミュニティ・メンバーは、そのアプローチを支持した。



それは良いアイディアであった。しかしコミュニスペースは、「これは価値のあるリスニングなのか、単なる確認なのか」を問う必要があった。



価値は、特に、コンテンツの方向性や広告についてのコメントや示唆に見られた。



編集面では、メレディスは次のような点を発見した。つまりメンバーは、新鮮な資料を希望した-これによって、コンテンツが週ごとに更新されるように計画された。これは単に、伝統的な方法を使ってなされる種類の決定である。



メレディスにとっての本当の付加価値は、文脈や活動、広告の受容へのリスニングの面で見られた。



原案では、レシピーを含んでいた。女性は、日常生活から切り離すのではなく、オケージョン(娯楽や家庭での食事、買い物など)の文脈で食品をみたいと思っている。



さらに、彼女らは単にレシピーを見るだけでなく、コミュニティの他のメンバーと意見を交換したいと言った。それによって、お互いに役立ち、生活をより充実させることができるからである。



リスニングを通して、メレディスは、彼らが魅力あるサイトとしての特徴とサービスを持っていることに気づいた。



しかし、売上を上げるためには、スポンサーシップを販売する、つまり資金提供をえる必要があった。



そのためには、次のような点も考慮する必要があった。すなわち、編集とスポンサーシップの適切なミックスは何かとか、多すぎる広告は敬遠されるだろうか。



リスニングによって、メレディスは、女性は、有名でよくリンクされたブランドによって提供された編集を受け入れることを学んだ。



このインサイトに基づいて、MixingBowl.comのチームは、いわゆる「クライアントのブランドの顧客経験を同時に強化するエンゲージ・リソース」と呼ばれる「バック・オブ・ザ・ボックス」レシピー・セクションを作成した。



コミュニティ上のコメントを根拠にして、メレディスの広告営業チームは、有望な広告主にその価値を提示することができた。



このリアルタイムの市場情報を理解することは、「広告主との関係を築き、イノベーションを推し進める上での差別的なキーポイント」である。



実際、メレディスは、特別の機会やプログラムのためのインサイトを得るために広告主と協力してReal Women Talkingを活用した。



Ripple6社によって運営されているMixingBowl.comは、グループやプロファイル、フォーラム、シェアリング、アップデイトといったソーシャルネットワーキングのフル・サービスの提供を開始した。これによって、メレディスは、インサイトや、コンテンツや特集のためのアイディアを掘り起こすための追加のリスニング投稿を多く得ることができるようになった。



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2010年10月21日木曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (3) 新製品開発とイノベーション その2

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<第38回>

Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:

Social Media時代の新しい消費者調査 の第31回目です。

「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第4回目です。


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2.2.3  新製品の共創:フィアットMIOプロジェクトの例



消費者相手のビジネスにおいて長い間不可欠なものであった「提案箱」は、顧客の声を企業内に運ぶものであった。多くの場合、それは弱くて小さな声であった。

Stew Leonard’s グロサリー・チェーンのようなところでは、未だに「提案箱」を出口に置いている。

ソーシャル・メディアの発展によって、それは豊富なアイディアとイノベーション工場へと変化した。

MyStarbucksIdea.comは、最も早く、かつ最も人気があるサイトとして、熱狂的なファンと共に、アイディアを共有し、議論し、投票を行い、実際のアクションを行った例である。

2009年の後半までに、約7万におよぶアイディアを集めている。

フィアトMIOプロジェクトは、ブランドがその顧客と関わる別の方法を示した例である。

自動車メーカーは、通常、顧客から「ウオント・リスト」を作成する。

調査や、グルイン、顧客パネルによって作成されたリストは、製品の改良や新しいアイディア(3つあげるとすれば、カーホルダーや社内エンターテイメント・システム、設定可能なシート)に活用される。

しかし、人々のオープン・コミュニティとの協働によって、コンセプト・カーのような重要な開発を設計することは非常に稀である。

しかし、これがフィアットが、MIOプロジェエクトでまさに行っていることである。

フィアトMIOプロジェクトは、車をパーソナルにするためのアイディアを発見することに焦点を当てている。

結果がどうであれ、フィアットは、組織的にソーシャル・メディアとリサーチ手法を活用して専門性を学習し、発展させようとしている。このことは、人々が望む要素に完全に基づいた製品を開発するためのインサイトに関与し、活用し、開発することに役立つという利点を持っている。

MIOプロジェクトは、企業として、人々をその思考と方向に導こうとする3回目の試みである。

MIOのウエブサイトにある以下のメッセージは、彼らのコミットメントを表している。


「我々は集団として、また参加意識をもって、未来を考えなければいけない。それゆえに、フィアットは、フィアットMIOプロジェクトを継続し、あなたのアイディアを現実化するために行動するだろう。それらが簡単であるか、あるいは複雑であるかということは問題ではない。すべての人は、将来がどうあるべきで、よりよくするにはどうすればよいかについてアイディアを持っている。それゆえに、あなたが参加することが不可欠である。何かを生みだすために、あなたのアイディアと、我々の力を合わせましょう。我々はあなたとともに、新しいプロジェクトを立ち上げ、新しい車や次世代のための新たな輸送手段を作りたいと願っています。」


フィアットは、ブラジルのAgenciaClickという代理店と一緒にこのプログラムを運営している。彼らは、ウエッブサイトを作り、ツイッターやその他のソーシャル・ネットワークに登場している。

なぜブラジルなのか。

1つの理由は、ブラジルがデジタルに詳しい国だからである。

2つ目の理由は、フィアットは、ブラジルで最も大きな自動車メーカーであることである。およそ25%の市場シェアを持ち、5番目に大きな広告主であるからである。

ソーシャル・メディアだけではリーチを確保できないけれども、伝統的メディアとデジタル・メディアにおけるこの革新的なプロジェクトについての話は、プロジェクト・ニュースを拡大し、認知を広げ、口コミを生みだし、参加を促進した。

「2009年の8月にスタートして2週間で、サイトには6万7,000のビジターが訪れ、1,700のアイディアを投稿し、4万を超すコメントをツイッターに書きこんだ」とアドバタイジング・エイジは報告している。

10週間後に、MIOサイトは、次の7つのカテゴリーにおいて、9,301人の参加者から6,683のアイディアを収集した。カテゴリーは、一般や、安全、デザイン、駆動力、人間工学、機械材料、娯楽情報番組が含まれる。

投稿者は、書き込んだり、写真やビデオを掲示することができる。

サイトの訪問者の投票によって、提案の人気度やアピール度をMIOが推測することができる。

重要なことは、そのアイディアは必ずしも新しいものでなくてもよいということである。ある人は、既存の競合ブランドから望まれる特徴についての情報を投稿したりする。

インスピレーションのソースがどこであれ、人々は開発のプロセスの一部であり、彼らの声が「リスニング」されていることを望んでいる。

会話やコメントが推奨されるとともに、MIOは正しくリスニングするための戦略を持っている。それによって、彼らやコミュニティは、コンセプト・カーの開発ニーズを同じタイミングで動くことができる。

特徴やデザイン、現ステージが最初である。

次に、エンジニアがデザインの提案の最初のラウンドに集中する一方、ブランドとマーケティングのアイディアが、2010年3月には望まれるだろう。

最後に、コミュニティは、車の最後の組み立てを行うに従って、企業の努力やより特定の推奨についてのフィードバックを求められるだろう。

MIOは、コミュニティに情報を伝え、参加し続けるだろう。

リスニングとエンゲージメントを繰り返すことによって、ベスト・カンパニーとコミュニティ・アイディアの選定と実行が行われる。

プロジェクトは、第1ステージであるけれども、フィアットは、望ましい車についての貴重なインサイトを得ており、彼らの既存の車のマーケティングや広告を伝える顧客の声からその手ごたえを感じている。

フィアットあるいはその他のリスニング企業は、現在入手可能な特徴の中でどれが最も魅力的で強調すべきかを学ぶことができる。

例えば、特徴への関心の地理的な分布を知ることによって、企業がその提供を地域化することを手助けすることができる。

もう1つ例を上げると、メッセージやクリエイティブは、顧客のコミュニティで明らかになった動機や願望、ベネフィットに合致するようにあわせることが可能になる。

次の事例が示しているように、リスニングによって得られたガイダンスによって、顧客とのつながる企業の力を強化し、セールスの可能性を拡大させることが可能になる。

 
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2010年10月14日木曜日

ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (3) 新製品開発とイノベーション その1

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<第37回>

Steve Rappaport The ARF Listening Playbook

リスニング・マーケティング:

Social Media時代の新しい消費者調査 の第30回目です。

「第2章 ケース・スタディ:リスニングの活用」の第3回目です。


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2-2.新製品開発とイノベーション


リスニングによって、顧客中心の製品やサービスが生まれる。




対象が台所で使う新しい調味料から、新車、新しいWEBまで、成功した製品のデザインや関与度の高い顧客の創出に、リスニングは貢献するものである。



2.2.2 新製品アイディアのテスト:J&Dのベーコン・ソールトの例



ベーコン好きの2人の友人であるJustin EschとDave Lefkowは、ある時ベーコンの香りのする調味料があればすばらしいと冗談で言っていた。そして、アイディアは生れた。我々の多くは、あらゆるサービスや解決策、食品、商品の情報を多く含んだコマーシャルが組み合わされた同じような会話を行っている。



しかし、アイディアのテストや、見込み客の反応は、最悪なものであった。



アイディアは確実であるという自信と、市場からの声との間のギャップは大きなものであった。



我々は、多くの新製品の失敗率を思い出させる必要はなかった。



MySpaceのデータを使って、ベーコンの愛好家を検索したところ、35,000人以上の人々が、彼らのプロフィールの中でベーコンに触れていることを発見した。



ジャスティンとデイビッドは、ベーコン味の塩についての関心を調べるためにこれらの人々にアプローチを行った。



話題が関心に火を付け、製品が製造される前に、注文が行われた。



多くの的確なターゲットの発見とソーシャル・ネットワークのコミュニケーション・ツールによって、彼らは会話を外部に広げるバズを作り出すとができた。彼らは現在でもMySpace, Facebook, Twitter and YouTubeを利用している。



メーカーは、2007年販売を開始した第1週から、いきなり成功を収めた。



2008年には、収益が100万ドルに達した。



販売はこれまで65万個の注文があり、商品は広く流通している。



会社は一発屋ではなかった。リスニングによって、サンドイッチ用のベーコネーズやベーコン味のひまわりの種の開発を行った。



さらに会社は、ベーコンの香りがする石鹸やローション、ボディ・スプレーといったパーソナル・ケア製品の販売実験を行っている。そして、「bringing home the bacon」というフレーズに新たな意味を付加しようと試みている。



2.2.2 新製品イノベーションを構造化するフレームワークの活用:女性向けの食品の例



女性向け食品の新製品開発のプロジェクトにおいて、フルサービスのリスニング・ベンダーであるUmbria(現J. D. Power Web Intelligence)は、イノベーション・フレームワークと、女性の会話や投稿、コメントのテキスト分析と人的分析との組み合わせの活用を行った。



彼らの方法は次の3ステップを含んでいる:



1)消費者が取り組む課題と特定し、課題別の消費者のセグメント化

2)課題のドライバーとアンメット・ニーズの発見

3)それらを満たす製品の特定



アンブリア社は、女性と食品に関わる情緒的なランドスケープを調べた。



課題を4つの自己記述的なトピックに分類した。



①ミー・タイム、②体重管理、③バランスと健康、④内面からの美



アンブリア社は、新製品プロジェクトにおいて、4つの「ニーズ・ステートメント」を特定した。



①フォーカス、②活性化、③つながり、④リラックス(図3参照)



プロセスによって、同一条件での比較と日々の対照が可能な統一的な分析スキームが可能になった。



アンブリア社は、それぞれのニーズにおいて、目標や女性の活動、ポジティブやネガティブな感情、それらと関連する食品に関連したキー・コンセプトの整理を行った。



報告書は、日々の女性の関心や気持ち、好みの推移を表している。



ブランドは、製品イノベーションの可能性を評価することが可能であると報告書は結論づけている。



ミー・タイム視点から活性化ニーズをより詳しく見てみよう。



リスニング・データの要約(図4参照)から、分析者は、キーとなる戦略的インサイトを発展させた。女性のエネルギーは突然枯渇してしまう。(「その時ひらめく」)。そして、彼女たちは永続的な刺激を求める。それは、例えば、彼女らが「どんなものにも負けないという強い気持ち」を助ける良い簡便なスナックーである。



しかし、健康的な他のものがないので、彼女らは「ジャンク・フード」を食べている。



伝統的な新製品開発において、これらのインサイトは、新製品のアイディアを生みだすのに使われるだろう。開発プロセスを長くしたり、新製品を市場化するための最終的な時間を延ばすためのプログラムである。



他方、リスニングのデータの場合、例えば、Super Woman Chocolate Doseのような活性剤的なアイディアによって、時間を短縮することができる。



アンブリア社は、リスニング・データベースをマイニングすることによって、インサイトに関連した製品アイディアを探し出した。それは、ニーズに関連したインサイトからである。



十分に説明されてから、アイディアは、女性の目標や、活動、感情の適切な文脈において評価され、さらなる開発のために選定されるものである。



そのようなイノベーションのためのフレームワークは、非常に大きな価値を付加するものである。というのは、それがマーケターが、コンテキストを理解するのを助けるゆえに、思考とリサーチを構造化するからである。



基本的なフレームワークなしでは、リスニング・プロジェクトは、有効にアクションにつながることが難しい単なる「インサイト」の寄せ集めになる危険性がある。



ブランドが挑戦している課題が何であろうと、リスニングのフレームワークとプロジェクトの目的との合致が成功への鍵といえる。




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