2010年2月15日月曜日

リスニング調査:Social Media時代の新しい消費者調査の方法 (The ARF Listening Playbookの紹介第2回)

●今回は、ARFから入手した資料The ARF Listening Playbookの

「第1章 リスニングの本質」の約半分部分の紹介です。

*Listeningは「傾聴」と訳しているマーケターの方もおられますが、
ここでは「リスニング」としました。以下はその翻訳です。


本書は、リスニング調査方法の基礎について述べている。

30以上の事例や、問題解決の方法、リスニング・マーケティングの理論的背景、
70を超えるリスニング・サービスの提供会社の紹介を行っている。

リスニング調査手法についてのすべてを知りたいと思う方にとって、
本書はまさにリスニングの本質といえる。


1.リスニング手法の定義


これまでほとんど毎日、全米広告調査財団(ARF)では、
リスニング調査について、議論してきた。
新しい用語が出てきた場合、いつもそうであるように、
人によってその定義はまちまちである。

用語の定義は、広告主やメディア、調査、広告会社の人々に
影響を与えるものなので、われわれは業界団体として、
厳密で包括的な定義を目指した。

それゆえに、リスニング手法の「操作的な定義」から始めることにした。

我々のリスニングの定義は、

「自然に起こる対話や行動、兆候を研究すること」である。

それは意図的である場合とそうでない場合がある。

それによって、人々の生活の声がブランドに届けられるのである。

まずこのリスニングの定義を説明し、その理由を解説しよう。

「自然に起こる対話や行動、兆候を研究すること」とは、
人々の本物で生の考えや、感覚、感情の研究すること。

「自然に生じた対話」とは、オープンで強制的でない形で、
ブランドや企業との相互作用によって人々の間に起こった対話を意味する。

ここでいう行動とは、ショッピングやブランドの使用などの人々が行っていることを
観察することである。
そして、兆候とは、ジェスチャーなどで人々が暗黙のうちに発するものを指す。

「意図的とは」、人によって、ブランドや企業についての話題が特定される場合を指す。

「意図的でない」とは、対話の流れが自然に流れて行く場合を表す。

「人々の生活の声が届けられる」とは、深いインサイトや説得力のある話を通してである。

「ブランドに」とは、お互いのために関係が深まり、行動がとられるということである。

この定義は、いくつかの重要なアイディアを伝達してくれる。

第1は、リスニングは、人々が語ることや、いかに行動し、どのように反応するかに
関心があり、オンライン上の対話にだけ焦点を当てているものではない。

第2に、ブランドをリスニングすることは、人々に対して責任を負っている。
つまり、リスニングすることは、非常に敏感で、尊重されるものであり、
ブランドの代弁者でなければいけない。

最後に、ブランドと顧客は、いつも学習関係にあるということである。
つまり、お互いがリスニングを行い、反応することによって改善がなされる。

リスニングのこのような定義は、オンライン上に限定されるものではない。
あらゆるところで起こることに気づくだろう。

リサーチの方法や、ツール、技法だけではない。
リスニングを行う場所や方法は、プロジェクトやブランド、顧客、
参加する人々の知識によって決められる。


2.本書の焦点


本書は、対話のリスニングに焦点を当てている。
行動や兆候についてのリスニングのガイドブックである。

以下の事例やリサーチ方法、リスニング・マーケティングの発展は、
すべて対話を軸に展開している。


3.ブランドにとってリスニングが必要な理由


インターネットへの高速アクセスや、ブログ、フォーラム、ソーシャル・ネットワーク、
ツイッター、コミュニティ、ウイキィなどの「対話型ウエッブ」によって、
自分の問題や経験、好き嫌い、人生全般、、、そしてブランドへの欲求について、
これまでになく人々はお互いに会話を行っている。

製品やサービスについての自然で豊富な生の口コミを理解することによって、
既存顧客や潜在顧客についてより学ぶために、ブランドにとってリスニングが必要である。

本書では、リスニング・サービスの実務家や研究者へのインタビューを行った。
彼らは、次のような目的でブランドのリスニングを行っていると語っている。


1)顧客の脈拍を測るー消費者の感情を知る、

2)消費者が語ることから深いインサイトを発見し、彼らのウオンツや
未充足ニーズ、要望を学ぶ、

3)顧客の声を伝統的な調査と統合させる、

4)消費者との関係性を再定義し、彼らの声をブランドに伝達する、

5)ライフスタイルや製品カテゴリー、課題についての消費者の視点の変化を理解する、

6)意見の文脈を探り、その理由を理解する。


ここで重要なことは、これらのブランドの専門家が、
リスニングから得たインサイトに基づき、
自らのブランド構築活動について発言している点である。

彼らは、例えば、
1)サービスや特徴を付加することや、
2)新しい内容を創作する、
3)製品を改良する、
4)マーケティングや広告の影響を評価する、
5)ブランド・ヘルスをより有効にモニターするなどに言及している。

彼らにとって、リスニング手法は、ブランドの成功にとって、
「あれば良い」ものではなく、「なくてはならない」ツールである。


4.リスニング手法の内容


リスニング手法は次のようなプロセスで行われる。


1)ブランド目標に関連したゴールを設定する、

2)リスニングに最も適した消費者の声や対話を特定する、

3)対話を収集し、処理する方法を確立する、

4)リスニング作業に参加する、

5)対話をトピックスやサブ・トピックス、テーマ、あるいは人によって分類
することによって分析する、

6)これらの作業を再検討し、再び実行する。


内容を共有するとともに、作業内容や参加の仕方はさまざまである。

このような対話のモニタリングや、重大なことが発生したときの通知には、
ソフトを使った場合や、フルサービスの会社とのプロジェクトの場合、
コミュニティの運営の場合などによって、異なったニーズが存在する。

例えば、詳細の実施の詳細や、方法のテストや見直し、データ・クリニーング、
レポーティングといった重要な項目は、それぞれのプロジェクトの目的
に応じてさまざまである。



5.ブランド成長のためのマーケティング課題解決に役立つリスニング


次の2章で紹介する30を超える事例は、
リスニング・リサーチとそれによって明らかにされたインサイトの活用によって
達成された広範囲なビジネス目的を反映している。

リスニング手法は、ブランドがその戦略を考える場合に最初に行うことである。

我々が取り上げた事例は、新規顧客の発見から、
ロイヤルティや顧客価値の向上にいたるブランド・マネジメントの
全領域をカバーしている。

リスニング・リサーチは、限られて機能ではなく、
ブランド成長のためのプラットフォームであると位置づけられる。


それぞれのマーケティング課題ごとに、2つ以上の事例を含んでいる。

取り上げたマーケティング目標は、


1)新規顧客の発見や、

2)新製品の開発とイノベーション、

3)ブランド・メッセージの創作と精緻化、

4)既存製品の改良、

5)販売力の維持、

6)ブランド成長の推進、

7)ブランド再構築とリポジショニング、

8)顧客サービス課題、

9)評判のマネジメント、

10)ブランド・ヘルス・マネジメント、

11)顧客対応、

12)ロイヤルティと顧客価値の向上である。



6.リスニング・リサーチの利用



本書で取り上げた事例では、ブランドが目的を達成するための戦略や、
戦術、プログラムを導くリスニング調査についての議論がされている。

代表的事例を紹介するとともに、リスニング調査の方法についても説明を行っている。

1)新規顧客のプロフィールや評価(ヘネシー・コニャック)、

2)対話の分析による市場や顧客の変化の予兆の早期察知(電子ゲーム市場)、

3)顧客のセグメンテーション(女性向け食品)

4)製品のポジショニングについて、従来の「質問」調査を補完して、有効なインサイトを付加(ジレット・フージョン)

5)コンセプト・テスト(J&Dベーコン用食用塩)

6)製品開発(フィアト・ミオ)

7)ブランドの新しい特徴の発見と評価(婦人用家庭雑誌)

8)ブランド・メッセージの開発やテスト:市場での戦術的な変化(携帯電話)、危機の対応(ハスブロ)

9)顧客参加の戦略の構築(ミニ)

10)競合の戦略や市場での行動の評価(生活用品)

11)顧客ケアの問題や機会の発見(ネットビズ)

12)ブランド拡大や、活発なコミュニティの構築、ロイヤルティの向上(ライオン・ブランド・ヤーン)


ここで、理解すべき重要な点は、伝統的な調査手法を使う場合と
同様な目的で、ブランドのためにリスニング調査が使われているということである。

我々がインタビューを行った専門家たちは、次のような既存の調査方法に対するリスニング調査の優位点を強調している。


1)スピード、即時性―結果は数カ月ではなく、数日か数週で得られる、

2)調査が有効でなかったり、新しい方法を探究する場合には素早く変更が
可能といった柔軟性と軌道修正が可能である、

3)リサーチャーの用語ではない消費者の言葉が使用される、

4)生の対話を聞いて分析が可能である、

5)リサーチャーが思いつかないような質問への回答が得られる、

6)大きなサンプル・サイズに対応できる、

7)費用的にも有利である。

以上◆

《このBlogは毎週月曜日の午前中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日の午前中です。また臨時に更新されることがあります》

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