2010年4月30日金曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第12回)

●ARFのThe ARF Listening Playbook


第5章 リスニングとリサーチの変革」の後半の紹介です。


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フェースブックがマイスペースにとって変わった。

ツイッターが4000万ユーザーとともに突然現れた。

消費者の共有が、スーザン・ボイル現象を生みだしたり、

2008年のモートリンの失敗*のような大規模なマーケティング・キャンペーンを

中止に追い込んだりした。


注* Motrinモートリン(鎮痛薬)2008年12月に、頭痛薬のCMで「子供を背負ったり抱いたりするのは頭痛を引き起こすことがあります」とユーモラスなビデオで紹介。ママたちの怒りが爆発。炎上を受けて4日後、公式に謝罪。Controversial Motrin Moms Commercial (「日本にソーシャルメディアの風を!」より。


オンディマンドTVによるビデオや、DVD、モバイル、ウエッブの存在は、

ビデオがもはや一方的に見るという体験ではないことを示している。



変化は、加速度的に進行している。

今後、あなたのビジネスを撹乱するのは、現在の競争相手ではなく、

テクノロジーの具現者や、成功した起業家、究極的には、

それらを活用する消費者であるだろう。



それゆえに、我々は再び「なぜ変化するのか」を考えたい。

我々は、変化が激しく予測しづらいマーケティング環境の中で暮らしている。

未来研究所は、これを4つの文字の頭文字をとって、VUCAとよんでいる。

すなわち、不安定性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、

複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)である。

従って、組織は、素早く学習する組織(fast learning organizations)

目指してその焦点を変えなければいけない。

マーケターは、彼らが売ろうとしているブランドの視点ではなく、

チェンジ・メーカー(change-makers)つまり人々を彼らの文脈で研究する必要がある。

マーケターは、彼(女)らのインサイト・チームに、

未来に焦点を当てた大きな問題に取り組むことを要求しなければいけない。

リサーチやインサイトのチームは、過去を測定するだけでなく、

将来の状況を予測したり、マーケティング戦略やアクションの提言を

行うために学習しなければいけない



リサーチは、自らが変わらなければいけないだけでなく、

マーケティング思考の中心に人間を据えた俊敏な学習者の役割を果たす

ことによって組織をも変革しなければいけない。



リサーチは、リスニングにこれまで以上に重点を置かなければいけない。

予想していないことをリスニングするには、謙虚な気持ちが必要である。

人々は、行動への参加を始めたり、我々が未だ十分に理解していない方法で、

ライフスタイルの選好や選択を変化させているかもしれない。

それゆえに、われわれはリスニングを行うのである。

アイフォンの大きな転換点は、その営業レポートで最初にわかったのか、

それとも、検索やオンライン上の会話で最初に明らかになったのか。

人々の経済に対する関心が、どの時点で、ターゲット社が何をやっているかを

調べていたウォルマートを再び勢いを取り戻す方向へ転換させたのだろうか。*

逆転が起こり始める初期に、ターゲット社が、消費者が語っていたことに反応したのだろうか。


*リーマン・ショックの前まで、ウォルマートよりも好調であったターゲット(USの大型量販店)が、
不況下に不調に陥り、ウォルマートに抜かれたことを指す。(タイムの記事参照



本書を書いている時点では、オンライン・ビデオをモバイル機器で見ている割合は非常に低い。

キンドルでの新聞購読のシェアも小さい。

これらが大きく伸びる場合、どのような兆候が見られるのだろうか。

もし一方が大きく伸びて、他方が一時的な成功に終わった場合、

歴史として行動が指標に表れる前に、どのようなシグナルが見られるのだろうか。



リスニングは、イノベーション・プロセスの中心に位置付けられる必要がある。

これは、多くの組織やリサーチのリーダーにとって、180度の大転換である。

後方に位置していたリサーチが、真正面に置かれることになる。

これからは、マーケティング・チームが、コンセプトや広告テストを

依頼する時に初めて、リサーチの役割が始まるのではない。

リサーチの役割は、消費者の次の動きを予想することであり、

マーケティング・チームがイノベーションを起こすことを助けることである。



この変革の強固な思考枠組を提示したのは、

キム・デディッカー(元P&G)である。

彼女は、正規分布図を書いて、調査支出のおよそ80%は、

(コンセプトや製品、広告、マーケティング・キャンペーンの)「テストや評価」に使われ、

残りの20%が、「イノベーション」の創造と、「感覚や反応」に2分されていることを示した

2003年に、我々は、「テストと評価」の正確性の改善に焦点をあてた。

2008年と2009年には、この支出のバランスの適正化と、

企業内における学習の創造に焦点を当てた。

確かに、多くのテストと評価のためのリサーチが行われている。

しかし、正確な予測や説明力ある指標は、学習する組織においては、

もはや十分なものではない。

リサーチの方法は、企業がすべてのテストから学べるように

設計されなければいけない。

例えば、新しい考えがうまくテストされたり、されなかったりするのには

理由が存在する。

このことは重要な学習につながるものである。

もしうまくテストされない場合は、既に教訓を学んでいるので

そのテストが不要であるか、調査が効果的に設計されなかったと言える。



これまでになかったソーシャル・メディアや、検索、その他のオンライン上の活動で、

自然に起こった会話や行動のおかげで、

幸いにも、我々には聞く能力もあり、予想していないことを聞く能力もある。

このようなインサイトは、リサーチのリズムを変える絶え間ない川のように我々に押し寄せてくる。 

ニールセン・オンラインのピート・ブラックショーが名付けた「リスニング・パイプ」は、

強制的なサーベイ」を今や超えた存在である。

それは、「ブランドの後方」や、流通における相互作用、

管理されたコミュニティにおけるソーシャル・メディアでの会話や、

検索、デジタル分析、顧客間の相互作用を含んだものである。

2009年にサンフランシスコで行われたリサーチの変革についてのARFの会議で、

『グランズウェル』の共著者であるシャーリーン・リーは、

活動家的な消費者」の台頭について言及した。

彼女と、ピート・ブラックショーは、そのような消費者は、

聞いてもらうことを望んでいるという点で同じ意見であった。

本書でのニールセンとP&Gのケースが証明したように、

リスニングと、サーベイからは、それぞれ異なったインサイトを得ることができる。

リスニングによって、知らないことを理解することができる。

マーケターのリサーチとインサイトのチームは、

このリスニングとサーベイのインサイトの2つのソースを統合する戦略

発展させなければいけない。



リサーチは、その存在価値をどのようにして高めるかについて継続的に腐心してきた。

筆者は、これに関係して、映画「Xメン」の類推に共感している。

Xメンのすべての主な登場人物は、ある状況において、

最大の力を発揮するユニークで、強力なパワーを持っている。

これまで、リサーチの強力なパワーは、測定だと信じられてきた。

我々のXメンの強力なパワーは、人間を生活に位置付ける

総合的に予測する学習能力であることに気づいた。

人々がどのような生活を送りどのようなことに関心があるかについての視点は、

変革やブランドに関係性を持たせる上で非常に重要であるので、

これはXメンの状況に匹敵するものと考えられる。

あなたのチームにウルヴァリンやストーム*が必要ではありませんか。


Xメンに登場するキャラクター


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