2010年4月22日木曜日

リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 (第11回)

●ARFのThe ARF Listening Playbookの


「第5章 リスニングとリサーチの変革」の前半の紹介です。

リスニング・マーケティングにより、リサーチがどのように変わるかを論じています。

この部分は、著者Steve RappaportのARFでの同僚でCRO(チーフ・リサーチ・オフィサー)を
務めているリサーチャーであるJoel Rubinsonが書いています。

彼は私のシノベイト時代の同僚で、リサーチのソリューション責任者でした。
ショッパー・インサイトの調査企画書を一緒に作成したりしていました。

彼のブログTwitterは、USでも高い評価をえています。

USを代表するリサーチャーの1人であり、またリサーチ変革の第1人者でもあります。


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第5章


リスニングとリサーチの変革



本書は、消費者が主導権を持っている時代に、迅速に対応できる組織を
作ることについて述べている。

恐らく本書の多くの部分では、マーケティング・リサーチやインサイトが、
ビジネスに影響を与えるやり方を変革することについて述べている。

賢明にリスニングを行えば、差別化を生みだすことが可能である



リサーチの機能は次の2つである:

1)予測できることを定量化する、(つまり指標化) 

2)予測できないことを聞く。


リサーチの価値を高めようとする考えが、この5年間で、どのようにして、
定量化から、リスニングを必要とする「何か」に変化したかをこれから説明しよう。



2003年にARFとESOMARは共同で、マーケティング・リサーチのビジョンと

価値を再定義するために熱心に活動する業界のリーダーの動きを世界中で後押した。

2008年の7月以来、ARFはリサーチの使命やビジョン、機能の範囲を再定義するために、

リサーチ改革評議会を立ち上げ、著名なマーケターのチームをリードしてきた。

たったこの5年間で、これらの2つの活動は、非常に異なった方向に進んできた。 



2003のキーワードは、説明責任や、妥当性、差別化、科学、測定、モデル、

知識、調整、正当性、R4―正しい情報や、正しい場所、正しい時間、正しいフォームであった。



2008年と2009年に開かれたリーダーシップ会議や産業フォーラムで
出されたキーワードは全く異なったものであった。

例えば、ヒューマンや、統合、科学、ソーシャル・メディアによる共有、

学習、ストーリーテリング、リスク・テイカー、戦略(どこで戦い、どこで勝つか)。

なぜこのような変化が起こったのか。

2003年までは、マーケターは、「刺激―反応」モデルに従って考えていた。

つまり、マーケターは、消費者の反応を期待する刺激を提供していたのである。

マーケターは、コンテンツやメッセージの主導権を握っていた。

伝統的なメディアであっても、ウエブ上のものであっても、

そのコンテンツは、マーケターが作り出したものであった。



ビジネスというのは、「バランス・スコアカード」*的思考性を持っている。

つまり、指標によってパフォーマンスを改善することや、

組織的整合性**を達成するためにそれらを使うことに焦点を当てている。



注*バランススコアカードは、従来の財務分析による業績評価に加えて、お客様の視点(顧客の視点)、業務の内容や製品のクオリティ(業務プロセスの視点)、企業のもつナレッジ(アイディア、ノウハウ)や従業員の意識・能力(成長と学習の視点)を加味した業績評価を行なうことで、企業のもつ有形資産、無形資産、未来への投資などを含めた今を総合的に評価するためのマネジメント手法

注**Organizational Alignment は、企業と顧客の整合性、従業員と企業の目標の整合性、業務の達成度と期待感の整合性などのレベル。企業成功の可能性を評価、経営クオリティ向上のための経営課題を明らかにする。その組織が市場とアラインメント(方向性の一致)しているか、また、組織の中の従業員とベクトルがあっていうかどうかなど。



同時に、ビジネスは、マーケティングの成果を常に改善するために、

すべてのマーケティング活動のROIを測定するように求められている。

マーケティング・リサーチは、これらの組織ニーズを十分に活用した。

すなわち、消費者やマーケティングに基づいた重要な指標を測定して

スコアカードを作成したり、信頼性の高い指標をさらに正確かつ厳密なものに改善した。

特に、マーケティングのROI(投資収益率)を算出し、

最終的に改善することによって、マーケティング・リサーチは貢献ができるだろう。

事実、2003年には、コンサルタントや、リーダーシップ、インサイトという言葉は
必要なものとして含まれていた。しかし、差別化するほどのものではなかった。

組織が望むことー測定と検証に焦点をあてることは、リサーチの価値であった。



2004年から2005年にかけて、マーケティングの変化は始まった。

主導権は、既存のマーケティングやメディア体制から、人々に移行した。

そのころから消費者がウエッブサイトに群がり始めた。

そこでは、人々はお互いにつながりあい、自身のコンテンツの提供を始めた。

そこでの通貨は、相互依存であった。

現代では、消費者は、彼らのニーズやブランドの好みについての考え方や

写真、ビデオ、オーディオ、メッセージなどを直接、共有することができる。

消費者は、主導権を別の方法で獲得したのであった。

メディアや買い物のロングテールがどんどん長くなるように、

選択はほとんど無限になった。

コンテントのタイプとメディアとの一貫性はなくなった。

今日では、30分もののコメディ*は、もはやテレビとは同意語でなくなっている。

モバイルを含む、少なくとも3つのスクリーンでも見ることができる。


注*シチュエーションコメディ(situation comedy)はコメディのジャンルのひとつで、登場人物や場面が固定された連続もののコメディ作品やその手法を指す。しばしばシットコム(sitcom)と略される。日本で有名な作品としては『奥さまは魔女』や『フルハウス』、『フレンズ』など。



書籍は、キンドルのような携帯できる電子機器で見ることができる。

これは、書籍の広告の可能性を生みだしている。

マーケティングやメディア体制ではなく、人々が主導権を握っているのである。

人々の選択である。

CNNのニュースルームが、速報ニュースのために、

Twitterをモニターしているような世界で我々は暮らしているのである。



2006年に、タイム誌は、変化の予兆を表していた。

タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」は、「あなた」(消費者、人間、人類)であった。

2006年を違ったレンズで見ると、異なったストーリーが見えてくるだろう。

かつてなかった規模でのコミュニティやコラボレーションについてである。

無限の知識の宝庫であるウイキペディアや、百万チャネルをもつ

人々のネットワークであるYouTube、

オンライン・メトロポリスであるMySpaceなどである。

少数者による変化のパワーや、相互扶助など、単に世界を変えるだけでなく、

世界を変える方法自体を変えてしまうということである。



これらはほんの始まりに過ぎなかったことを我々は現在、理解している。。。

(後半に続く)

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