2010年5月13日木曜日

リスニング・ソリューション: ソーシャル・メディア・マーケティングにおけるリスニング(傾聴)の方法

◆ リスニング・マーケティング: Social Media時代の新しい消費者調査 の第13回目です。


2月8日からご紹介してきましたARF(USの広告リサーチ財団)の

The ARF Listening Playbookの6章の半分が終了し、後半部分に入りました。


全体の概略を説明した1章、リスニングの最先端の動向を展望した第4章、

そして、リスニングがもたらすマーケティング・リサーチの変革の方向性を

検討した第5章でした。


残りの章は、リスニングのUSにおける事例を紹介した第2章、

リスニング・ソリューションを提供する企業の解説を行っている最終章である第6章。

そして、今日から取り上げますリスニング・ソリューションの説明の第3章です。


本書は、2008年に出版された当時フォレスター・リサーチのアナリストであった

シャーリーン・リーとジョシュ・バーノフの衝撃的なイノベーションの著作である


『グランズウエル: ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』


(翔永社)


が、リサーチに提起した、

「組織内の権力構造が変わる。

マーケターや開発チームの情報源となってきた市場調査部門は

脇に追いやられ、リサーチ部門であれ、マーケティング部門であれ、

傾聴を担当している部署が組織の意思決定を左右するようになる」(132頁)


問題に対してのリサーチ側の2009年末までの回答の試みです。


リスニングの理論的基礎や、リスニングの具体的な方法を初めて体系的に議論した書であり、

ソーシャル・メディア時代におけるマーケティングやリサーチに関心のある人々に

大いに参考になる著作です。


ARFは、マーケティングやリサーチの業界を巻き込んで、

いち早く、この問題に取り組み、本書を出版しました。


リスニング(傾聴)の方法として、グランズウエルでは、

①プライベートコミュニティを立ち上げる、

②ブランドモニタリングを始める(110頁)

の2つの方法が示されていましたが、その後のUSでの展開を踏まえて、

リスニング・ソリューションを次の6つに分類しています。


1)検索エンジンとメディア・モニタリングSearch Engines and Media Monitoring


2)テキスト分析のためのソフトウエア・ソリューション Text Analysis Software Solutions

3)フルサービス・リスニング企業 Full-Service Lsitening Vendors

4)オフラインとオンラインの口コミ Offline and Online Word-of-Mouth

5)バズ会社と口コミ促進プログラム Buzz Agencies and Instigated Word of Mouth Programs

6)個別のブランド・コミュニティ Private Branded Communities


今回はそれらの概要の説明です。


ARFの考えは、

マーケティング・リサーチが、マーケティング思考の中心に「人間」(human)を置くことによって、

ビジネス戦略を鼓舞し、ビジネス成長をばく進させるための革新的ビジョンに基づき、

迅速に学ぶマーケティング組織への変革や、

イノベーションに導く「予期せぬこと」を聞くためにのソーシャル・メディアのリスニング方法

の開発を目指しています。




グランズウエルから、

・「企業は顧客の声を聞いている。そればかりか細心の注意を払い、大金を費やしている。

しかし、こうした活動は「傾聴」ではなく、「市場調査」と呼ばれる。

市場調査をすれば、特定の質問への答えを知ることはできるが、

顧客インサイトは得られない」(107頁)


・「うまくやれば、カスタム調査はどんな質問への答えも引き出せるが、

考えてもみなかった質問への答えは得られない。

そしてビジネスの世界では、考えてもみなかった問いが、

最も重要な質問かもしれない」(107頁)


・「通常のリサーチは、想定の範囲内で進む。想定外の答えがでることはまずない」(113頁)


高見 俊介、ソーシャルメディアマーケティングの最重要戦略「Listening」の本質とは「顧客の声に耳を傾ける」を本気で考えてみる(翔永社、MarkeZine)も参照。





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第3章 リスニング・ソリューション




会話をリスニングする方法の起源は、人々の発言を研究する「メディア内容分析」

に遡ることが出来る。

第2次世界大戦中から現在に至るまで、内容分析は精緻化されて、

軍事や大学、ビジネス上の課題にインサイトを提供してきた。



長い間、内容分析は、コーダーと呼ばれる訓練された人々に頼ってきた。

コーダーは、用語や人々、組織、問題、行動、関係性、感情などを

雑誌や新聞、専門誌、原稿、イメージ、

さらには、自由回答の個人的な回答から抽出してきた。

コーディング作業によって、古くは大型電子計算機、

現在では小型の処理能力の高いパソコンで行う統計分析のための

データ準備が行われた。

今日では、WEB上でのサービスを提供することによって、

クライアントがハードやソフトをもつ必要がないサービスを提供している企業もある。



従来の内容分析には、多くの時間や人手、お金が必要であった。

しかし、過去10年間における電子出版や検索、

会話型WEBの出現やその拡大によって、

分析のための膨大な量の情報入手が可能になった。

さらに、ブロガーやワードプレスのような無料あるいは低料金のブログ・サービスや、

Bazaarvoiceなどの顧客のフィードバックや評価システム、

YouTube、 Flickrなどのビデオや写真の共有、

Diggなどのソーシャル・ブックマーク、

FacebookやOrkutなどのソーシャル・ネットワーク、

Twitterなどの非常に柔軟性のあるマイクロ・ブログの登場がある。

これらによって、すべの人が、全く新しく、かつてない規模で 

ライターや出版者、プロデュサー、コメンテイター、評論家、支持者、

対話者になることが可能になった。

人々は、日々自身の意見を発信し、拡散させている。

発行されるかどうかわからない「編集者への手紙」とか、

読まれて改善につながるかどうもわからない「苦情受付部署への手紙」、

CRMシステムで復元されない発言といったものに、

発言の場がもはや限定されることはない。

また、Eメールの量や影響力も制限されない。

つまり、マーケターや広告会社は、彼らが扱っている商品に、

興味があったり使用している多くの人々の意見を「聞く」ことができ、

会話に「参加」したり、彼らの声に従って「行動」することが可能であることを意味している。



このような驚異的な発展によって、リスニング・アプローチや、

検索用語分析、テキスト分析ソフト、フルサービス・プラトフォーム企業、

コミュニティの運営、オンラインとオフラインでの口コミ研究などの隆盛がもたらされた。 

これらは、ブランドが人々の意見をリスニングし、解釈、行動をする

手助けとなる技術やサービス、専門知識を提供してくれる。



(1)リスニング・ソリューションの分類



リスニング・ソリューションの数や、その内容の豊富さには驚かされる。

リスニング・ソリューション市場は、顧客の新たなニーズを満たすために

急激な変革を遂げている。

リスニングに大きなビジネス・チャンスを見い出した

ベンチャー・キャピタルや非公開会社によって資金援助をえた多くの企業が参入している。


我々は、リスニング・ソリューションを分類し、その特徴を整理しようと試みた。

まず、プロジェクトのタイプによって分類できるかどうかを調べた。

いずれのプロジェクトでも、どのリスニング・ソリューションも

活用することができることをわかった。

それでプロジェクト別のリスニング・ツールのマッピングはうまく行かなかった。

そこで、検討の結果、共通の特徴によって分類することにした。

すなわち、リスニング・ソリューションの「王国」を4つのグループに分類した。



①検索とモニタリング



・検索サービス

検索エンジンは、オンライン・ソースのインデックスを提供している。

検索エンジンは、検索用語のトラッキングを行い、

人気の高い検索用語とトレンドを報告している。

そのサービス内容は、簡単なリストの作成から、

テキスト・マイニング的な分析能力をもったものまでさまざまである。

あるサービスは、新しい結果が生じた時に知らせてくれる

アラート・システムまで提供している。



・リアルタイム検索

ソーシャル・メディアに特化した新しい検索エンジンは、

「ソーシャル」についてのインサイトを提供している。

それらは、情報がどのように共有されるかを説明し、

情報によって行動するためのツールを人々に提供している。

それらの多くは、アラート機能を持っている。

リアルタイム検索は、非常に関心の高い分野である。



・メディア・モニタリング

ソーシャル・メディアや通常のメディアをモニターしている。

ユーザーへの報告には、アラート・システムや、ダッシュボードを活用している。



②テキスト分析のソフト会社



テキスト分析のソフト会社は、以下の機能を遂行するための

ツールや能力をもったソフトを提供している:

・会話の収集や、処理、分析、レポーティング

・ワークフローやコラボレーション

・CRMや、外部や社内のシステムとのデータ統合



それらのサービスは、企業ごとに設定されたり、WEB上で提供されている。

多くの会社は、その両方で提供を行っている。

テキスト分析は、人気のある分野であり、特にWEB上の分析への関心が高い。



③フルサービスのリスニング・プラットフォーム提供会社



リスニング・プラットフォーム提供会社は、

オフラインとオンラインでの口コミを分析するソリューションのための技術や

サービス、コンサルテーションを行っている。

中には、リスニングを超えて、マーケティングやメディア、広告、PRの

プラニングや実施、評価をするエージェンシー的なサービスを提供する会社もある。



④個別ブランドのコミュニティ



個別ブランドのコミュニティは、ブランドの相互作用と

ソーシャル・メディアを併せた招待制によるWEBコミュニティである。

コミュニティは、コミュニティのメンバー間や、

ブランド担当者との会話を生み出すためのプログラムや活動を行っている。

アンケートを使ってフィードバック収集も行ったりしている。

以上のように、リスニング・ソリューションには、

グーグルやビングのような検索エンジンから、

会話型WEBやコミュニティに至るまで、さまざまツールが含まれている。

その処理や分析能力、サービス、システムの統合性の点でも内容はさまざまである。

どの方法を選ぶかは、組織やブランドが

リスニングを行う目的や、予算、スタッフ体制によっても変わってくる。


本章の以下では、それぞれの方法の特徴をより詳しく見て行くことにする。


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